10.夜のごはん会
この日の夜、久保さんの知人が集まるごはん会へお誘いいただき、遠慮もなく訪れた。私が到着すると大阪・肥後橋にあるCalo Bookshop & Cafeの店主・石川さんと画家のnakabanさんがいらっしゃった。
机の上には、四角のホーロー鍋の中に、まるごと焼かれた赤と緑のキャベツ、そして、ブルーチーズにハード系のチーズ、そして、ハンガリーの「旅人のスライス」が数種。
「旅人のスライス」というのは、忍者や侍が携帯保存食として持っていた「兵糧丸」のようなものだけれど、圧倒的に味のバリエーションも豊富で、お菓子のようなおいしさがある。
のんびりできる空間で、言うなれば、気を遣いあわない贅沢。
この空間が久保さんの言っていた公民館なのかも知れない。
人の家にも関わらず、誰でも入ってこれる。
気を遣わせないからこそ、進んで次は自分がなにか持っていこうという気にもさせてくれる。こんなに居心地がいいのは、久保さんの思う“持ちつ持たれつ”の心が、この空間に広がっているからに違いない。
旅人のスライス。ドイツにも似たような食べ物があるそう。これはハンガリーのもの。
文:松村貴樹 写真:香西ジュン 編集:竹内厚