不動産屋じゃない、けど不動産のこと
キタムラカオリ(hygge.)
#3 たとえば、ナナコちゃんのアトリエ
キタムラさんの「hygge.」から目と鼻の先にある、緑におおわれた急斜面にせり出すように建てられた平屋。イタリアのサルデーニャ島の文化や手仕事を紹介する活動を行っている平木奈々子さん(通称・ナナコちゃん)がアトリエとして借りています。ここも、キタムラさんがマッチングした物件です。
このアトリエ、最高じゃないですか。
キタムラ:でしょ? 隣りにお住まいの陶芸家さんが大家さんで、はなれみたいな感じで建てられたそうです。でも、ちゃんとキッチンもあるし、お風呂もあります。
まるで軽井沢かどこかの別荘に来たような気分です。
ナナコ:これからの季節は窓から見える緑も濃くなっていくし、風も抜けて気持ちがいいですよ。
ナナコちゃんはいつからここを借りてるんですか?
ナナコ:去年の5月からです。自転車で10分くらいのところに実家があって、そこで住んでますけど、作業するには少し手狭だったり、もっと気軽に人に来てもらえる空間があったらいいなと。
最初から家の近くで探してたんですか。
ナナコ:そうですね、自分用の部屋をもうひとつ借りようって感じ。だけど、いい物件なんてなかなか見つからないだろうし、「とりあえずキタムラさんにひと声かけといたら何かいいのが出た時教えてもらえるかもよ」って知り合いに言われて。
ちゃんと依頼するわけじゃなく、ひと声かけておく感じで。
ナナコ:そうそう。今すぐじゃなくてもいいから、ちょっと心当たりある物件が出てきたらお願いしますって感じでキタムラさんに話を聞いてもらって。
キタムラ:川西駅のパン屋のカフェでね。よく覚えてますよ。こんな雰囲気がいいって絵を見せてくれて。
間取りの絵ですか?
キタムラ:もっとイメージみたいなもの。こんなことがしたい、こんな環境だったらいいなとか、そういうことが絵と箇条書きで書かれてました。
ナナコ:平屋で、畳があって、風が通って、外には木があって、そこに私がサルディーニャから持ってきたものや自分の手仕事のものをいろいろ並べて、それを見てもらって……みたいな感じで。
ここ、100点じゃないですか。
ナナコ:本当にそうなんですよ。もちろん、キタムラさんに話をした時は、ただの私の中のイメージだったから、それを伝えるためにすごく情熱的に説明しました。
キタムラ:タイミングがよかったんですよ。ここは、私もずっとチェックしてた物件で、実は、数年前にも住んでた人が出たことがあったんだけど、私のまわりでは借り手が見つからなくて。でも、また住んでる人が出ていくって知ったので、これはハマるかなと提案して。
ナナコ:話を聞いて数日後には実際に見にきて、すっかり気に入りましたね。その後の不動産屋とのやりとりも、キタムラさんからいろいろアドバイスしてもらって。
不動産屋とのやりとり?
キタムラ:この物件はある不動産屋が専任で入っていて、他は扱いたくても扱えないんです。だから、とにかく不動産屋に会ったら、ここがどれだけ気に入ってるかっていうアピールを思いっきりしてくださいと。
ナナコ:細かくアドバイスをもらって、そのとおりにやったら、「わかりました。そんなに気に入ってもらえたなら、他の方には見せません」って、即決でした(笑)。
キタムラ:ナナコちゃんとは以前から友人だったし、彼女の活動にも興味あったので、ご近所に来てくれてうれしい。ときどき電話して、ここに寄せてもらって一緒にお茶したりしてね。
ナナコ:夜な夜な話したりしてますよね。私は、生まれ育ちもこのあたりですけど、近所にそれほど友だちがいるほうでもなかったので、そういったご近所づきあい自体がすごく新鮮で、面白いです。下の駐車場で一緒にマーケットもやりましたね。
下の空き地みたいなところ?
キタムラ:そうです。ここの大家さんが持っている土地で、いちおう駐車場なんですけど、そこを1日だけ使わせてもらって、近くのパン屋やカフェの人に声をかけて。
ナナコ:そういえば、あのマーケットの話も夜中に一緒にお茶している時に出ましたよね。このあたりは、住んでいる人がたくさんいるのに全然お店がなくて、何をするにも駅前まで行かないとだめだから、みんな喜ぶんちゃうかなって。実際、結構な遠くから人が集まってくれて、びっくりしました。
平木奈々子(nanalight)
旅先で訪れたサルデーニャ島に魅せられ、2013年よりサルデーニャ島の文化や手仕事、アートの紹介、輸入・販売をはじめる。また、着古した服の染め替えや草木染めの洋服の制作なども行う。https://nanalight.com/
文:岩淵拓郎(メディアピクニック) 写真:米田真也(anthem photoworks) 編集:竹内厚
(2017年7月28日掲載)