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  • キタムラカオリ(hygge.)#1 物件と人を「くすぐる」マッチング

不動産屋じゃない、けど不動産のこと
キタムラカオリ(hygge.)

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これまでOURS.で「借り暮らし」をテーマに取材を続けてきて見えてきたもののひとつに、いわゆる不動産屋とは異なるスタンスで物件と借りる人をつなぐ、いわば「繋ぎ屋」的な存在があります。
面白いことが起こりはじめているエリアにきまってひとりはいて、ユニークな視点と方法で物件と人をつなぎ、少しずつ地域の空気感を変えていきます。

今回ご紹介する川西hygge.(ヒュゲ)のキタムラカオリさんも、そんな「繋ぎ屋」のひとり。
普段は会社務めをしながら、たまに自宅の半地下スペースを開放している彼女は、主に川西・能勢・池田エリアで気になる物件を見つけては、小さなカフェを始めようとしている人やアトリエを探している若い表現者とのつなぎ役となっています。


キタムラカオリ
1971年、大阪市生まれ。2003年、箕面桜井市場にて雑貨店warm.をオープン。2006年に兵庫県川西市に移転。以降、川西市にてhygge.(ヒュゲ)を運営中。自身の店づくり経験を活かして、2014年から「カタチデザイン」名義で物件のマッチングや店舗のコーディネートなども行っている。 https://kitamkao.tumblr.com/

 

#1 物件と人を「くすぐる」マッチング

「hygge.」っていうのは、このスペースの名前ですか?

キタムラ:そうですね。最近は物件紹介が忙しくてほとんど開けてませんけど、いちおう雑貨屋兼カフェです。

最寄り駅から歩いて20分。住宅地のど真ん中で、さらに普通の民家の半地下。なかなかのロケーションですよね。

キタムラ:2003年から箕面の小さな市場で週末だけオープンする雑貨屋をやっていたんですけど、日当たりが悪くて、昼間でも電気をつけないと暗い場所でした。ここは、知り合いが物件を探すのについてきた時に見つけたんですけど、すごくいい感じで光が入ってきている、この半地下を見た瞬間に一気にイメージがわきました。「ここだな」って一目惚れ。

今日は、物件と借りる人をつなぐ「繋ぎ屋」ってことでお話を聞きに来ました。キタムラさんのことはどうご紹介すればいいんでしょう。不動産コーディネーター?それとも不動産アドバイザー?

キタムラ:何でしょうね。やっていることは不動産のマッチングですけど、いわゆる不動産屋がやっていることもマッチングといえばマッチングですから。どう説明すればいいか、私自身いつも困ってます。

不動産屋、ではないんですよね?

キタムラ:違いますね。不動産をやっているフリーの知人がいて、その人と一緒に組んでやっている感じです。不動産の取引には手続きとかのいろいろ面倒くさいことがあるので、そのあたりはその知人にやってもらっています。

マッチングを始めたのはいつごろから?

キタムラ:仕事として本格的にやり始めたのは2014年からですけど、そのずっと前から、自分で見つけてきた気になる物件や、知り合いが借り手を探してる物件を誰かに紹介するということはやっていました。

もともと不動産ウォッチャーだった。

キタムラ:まあそうですね。箕面の店を始める時、それほどお金がなかったから、内装とかを全部自分たちでやったら、自分で手をかけたから好きなようにできたというのもあって、「物件さえあったらなんでもできるぞ」って変な自信がついたんです。それからは、時間があれば古い物件を探すようになりました。「私ならこうやって使うな」とか妄想しながら。

それは趣味として?

キタムラ:完全に趣味です。それで魅力的な物件を見つけるたび、いろんな人に「こんな物件を見つけた」って話をしてたら、いつの間にか「あの物件ってまだ空いてるんかな」という感じで相談されるようになって。

「私も週末起業してみたい」的な流れで。

キタムラ:そうですね。だから、最初に相談されたのは主に私の店のお客さんで、そもそも趣味が合うというのもありましたし、どの部分を求められているのかってことも、結構はっきりしていたと思います。

これまでマッチングを手がけてきた物件を教えてもらえますか。

キタムラ:仕事として手がけたのは、能勢電沿線にあるカフェ。池田の山のふもとにあるパン教室兼ギャラリー。能勢の奥のイタリア料理屋さんとトレーラーハウスのスコーン屋さん。ここ(hygge.)のすぐ近くに個人作家のアトリエ。現在進行中のものも数件あります。

どこも川西能勢から池田のあたり、好みというかテイストも一貫してますね。

キタムラ:そうですね。駅チカの店舗物件とかだったら普通に不動産屋に行ってもらったほうがいいわけで、そういう物件を私に相談されても困ってしまいます(笑)。

チェックしている物件が違う?

キタムラ:それもありますけど、そもそもマッチングのやり方が違うんです。いわゆる不動産屋って、わかりやすく条件でマッチングしていくでしょ。南向きの物件とか、駅から5分以内の物件の探し方。でも、本当はその条件の裏にはそれぞれのイメージがあって、必ずしもその条件だけが合ってればいいってことでもないんです。私がやってるマッチングは、お客さんが持ってるイメージや好みを汲みとって、その上で、私なりの視点で面白く使えそうな物件を見つけてきて紹介するという感じです。

ということは、物件だけじゃなく、使い方も込みで提案されると。

キタムラ:そうですね。もちろんマッチングとして関われるのは物件を紹介するところまでだし、そこから先はお客さん次第ですけど、イメージを広げるためにこういう使い方をしたら絶対面白いですよっていうことは伝えています。私はそれを「くすぐる」って言ってるんですけど、くすぐり方次第で不動産屋が見向きもしないような物件でも興味を持ってくれますから。

文:岩淵拓郎(メディアピクニック) 写真:米田真也(anthem photoworks) 編集:竹内厚

次回、そんなキタムラさんの物件探しの方法を具体的に聞きだします。

#2 郊外でしかできない、ささやかなこと


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。

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