団地のひとインタビュー 002
たけだバーベキュー(BBQ芸人)
#2 たとえば巨大な塊肉がひとつあれば
日本でただ一人、バーベキュー芸人として活躍するたけだバーベキューさん。バーベキューのキラーアイテムをひとつ挙げていただいたところ、飛び出した言葉は「塊肉(かたまりにく)」でした。
#1 はこちら
バーベキューにおける塊肉の力、教えてください。
たけだBBQ:塊肉がひとつに心をつなぐと言いますか…。僕が、切る前の塊肉をみんなの前にどんと置くと、うわっと注目を集めて、まずカメラを向けられますね。それから、ステーキサイズに切り分けて、網の上に並べていく。その頃には、「ウマそうっ!」「 肉食べたい!」 というので、心がひとつになるんです。早よ焼けっという視線もありますけど(笑)。
話を聞いてるだけでも、肉が食べたくなってきました。
その肉を焼き上げて…実はまだですよと。アルミホイルに包んで肉汁を中に包みこむとよりおいしいんですね。そうしてでき上がった肉を切り分けて…いや、まだ待ちなさいと。
じらしますね(笑)。
マスタード、ピンクペッパー、いろんな調味料を盛りつけてから、さあどうぞ。これでまた写真タイムです。塊肉はみんなを惹きつけるし、それを共有して食べることで、その場にいる人をひとつにする力があります。塊肉の次は鶏の丸焼きだとか、そういったものををたびたび出すことで、周りに散っていた人がうわっと集まってきます。
手間にならないようあらかじめ家で切っておく、じゃないんですね。
そう、スペアリブでも1本1本焼いたほうが食べやすいけど、丸ごと焼くと見た目にもおもしろいし、切り分ける作業、骨ごとしゃぶりつくのも楽しい。いかにみんなが見て、味わって楽しめるところをつくるか。そうしたエンタテインメント性は大事にしています。
たけだBBQプライベート写真より
見た目のインパクトだけではなく、ひとつのものを分け合うことの楽しさも間違いなくありそうです。
ひとつにまとまる機会を多くつくることは大事ですよね。たとえば、最後は弱火の炭でマシュマロを焼くのもいいんです。小さな炭の周りを取り囲んで、マシュマロをぐるぐる回しながら焼くと、小さな輪ができるでしょ。
塊肉、鶏の丸焼き、マシュマロ…この流れは子どもの心も掴みますね。
僕は、子どもが手にする任天堂DSとかのゲーム機がバーベキューの敵だと思っていますので(笑)。子どもってひとつ作業を与えてあげたら、喜んで参加してくれますよ。
子どもに限らず、誰だってどこかでは参加したいものですから。何もしないバーベキューなんて…。
僕のバーベキューでは片付けは自分でしないと決めていて、みんなにまかせるようにしてるんです。切る作業とかも、できるだけ誰かにやってもらうようにして。
食べるものは分かち合い、役割分担としては貸し借りゼロのイーブンな関係に持っていくんですね。 確かに、食べるだけの役回りになると、どこか気後れしそうですから。
「UR-DIYキャラバンツアー」@箕面粟生団地 14.10.26
調理から片付けまで完璧にされると震えてしまうでしょ(笑)。兄さん方(先輩芸人)とのバーベキューでも、「俺の肉の焼き方」「俺の炭のおこし方」があったりするので、そういう時は、サポートに徹します。で、「最後にデザート用意しておきました」とか、さっと取り出したりすれば、「おまえ、さすがやな!」ってなります。バーベキュー奉行が一番ダメ。
バーベキューを極めていくと、できる奴、モテる奴になれそうですね(笑)。巨大な塊肉を焼いて、分けあって、役割を分担してという話を聞いていると、ギャートルズ的な原始の暮らしを思い浮かんできました。
それこそ、僕は最近、狩猟免許も取って、鹿狩りをするようになったんですよ。
狩猟もされるんですね!
もともとお肉への興味から狩猟に同行させてもらってたんですけど、自分の仕留めた肉をバーベキューで焼いてみたいなと思いはじめて、捌き方とかも教えてもらっています。僕の狩猟の先生もバーベキューの縁で知り合った方で、もともとミュージシャンで、料理もすごく得意、狩猟もやってるというすごい方。
バーベキュー上級者の世界は、ほんとに奥深い。
ただ、まだ自分で仕留めることはできてなくて。一緒に行った人が仕留めた鹿を焼いたことはあるんですけど。
たけだBBQプライベート写真より
山で獲って、焼いて、食べる。きっと血がたぎるような体験でしょうね。
そうですね。やっぱり脂ののった薄い肉、より1枚のステーキ肉、より大きな塊の肉、より仕留めた肉。本能的欲求に近しいほど、目の輝きが違います。銃で仕留めるところまでいくと、引く人もいるかもしれませんけど(笑)。ちなみに狩猟では、みんなで協力して1頭を仕留めて、それを山分けします。そういう点でもバーベキューに近いかもしれません。
バーベキューから狩猟までお話を聞いてきましたけど、ひとつに集まって分かち合うというところが、OURS.が掲げる「借り暮らし」に最も通じる点だと感じました。
大事なことですよね。わかりやすく「貸し借り」の話でいえば、バーベキューのレンタル業界の進化もすごいんです。今までは機材を持ってきてくれるだけだったのが、最近ではプラス食材も持ってきてくれる、なんなら焼く人もつけますよって。
手ぶらで行って、なおかつ焼く必要もなし…。あまり面倒や手間を省いてしまうと、これまで話してきたバーベキューとはまた違ってくるようです。
もてなしをお金で買うことになるわけですから。僕らとしてはもっと自分でやってほしいんですけどね。
借り暮らしのレッスンとしても、バーベキューは有効だという気がしました。どこを面倒だと思うかどうか、ですね。まずは、みんなで塊肉だ!
文:竹内厚 写真:平野愛
(2015年5月5日掲載)