2016.05.17
with
SHINGO☆西成(ラッパー)
around
西成~天王寺~寺田町〈大阪市〉
今回はSHINGO☆西成さんと寺田町をぶらぶら。
細い商店街にも関わらずたくさんの自転車が走り、偶然、お笑い芸人のダイアンがロケしていたり。
まさにSHINGOさんの帽子の文字に偽りなし。これぞ大阪の下町という雰囲気です。
#03
環状線/マゲイロス/「負けない」看板
ーところでSHINGOさんはどんなときに散歩します?
SHINGO:オレ、時間を潰すって言葉が嫌いで。なんかネガティブやし。時間があるときに散歩するかな。
ーリリックを考えたりしながら、ぼんやりと?
だから、ぼんやりしすぎて、まだアルバムできてないねんって…。
ー寺田町駅が近づいてきました。SHINGOさん、環状線好きなんですよね。
環状線ってお客さんの乗ってる具合がちょうどいいねん。東京は半端ないやん。あと、環状線はそれぞれの駅で個性的な店が多いし。いま、なんでもかんでも情報が多いけど、なにも調べんと今日はこの駅!って決めて歩いてみたら意外にいい店あるで。スマホもいいけど、ひとに聞くのもいいし。
ー聞くコツは?
ポジティブ・ヴァイブスで。
ーさすがのSHINGO流ですね。寺田町に着きました。このあたりは?
あんまり来ることないかな。待ち合わせとかで来たりかな。鶴橋でデートしたことあるけど。
ーいいですね。レンタルレコード「ポエム」という店の看板が見えますが、SHINGOさんもある意味、ポエムのひと。
ポエマーやね。あ、「ポエム」はもう閉まってるわ。
ー残念。
「マゲイロス」!
ーという名前のパン屋さんですね、入ってみましょうか。
「マゲイロス」。
ー声に出して言いたくなります。
「マゲイロス」。(と言いながら食パンを買うSHINGOさん)
ーギリシャのパン職人の名前だそうですよ。どうかしましたか。
ジムとかで雑誌見るけど、いまパンの特集ばっかりやん。もうパン、パンですやん? 関西のパンとか上半期のパンとか。嫁の喋ってることもパン、パンって。ほんまにパンばっかりやな。
ーたしかにパン・ブームですね。駅前から少し歩くと生野本通り商店街。商店街の入口にある書店には新刊本のタイトルがずらり。それだけなのにインパクト大。
「姉御刑事」って。死んでも生き返りそうな刑事やな。やっぱりオレ、商店街好きやな~。この前も天神橋の商店街行ったけど良かったわ。
ー「鉄道忘れ物市」の店もありますよ。50%オフです。
(無言でジャンパーのコーナーを物色するSHINGO☆西成)
ーそろそろ、この企画の制限時間、2時間になりそうです。最後に商店街の喫茶店に入りましょうか。
うん。(ドアを開けて)こんにちは。
ー今日は西成から寺田町まで、けっこう歩きましたね。環状線の駅でいえば、新今宮、天王寺、寺田町で3駅分。
この前、個人タクシー乗ったら、連れのおっちゃんに乗せてもらってる感覚になったわー。
ー急になんの話です?そういえば、あの西成の三角公園そばに掲げられていた「負けない」の看板、どういうキッカケでできたのか教えてください。
看板があった前のパチンコ屋の若社長とオレの後輩と、西成に待ち合わせできるようなポイント作らへん?っていう話になって。渋谷のハチ公前みたいな。ポジティブになんかできひんか?と。
ー待ち合わせ場所なんですね。
あのへんに住んでると分かるけど、地元はもちろん、玉出とか岸里、住吉とかへの行き来でひとがすごく通る場所で。
ーたしかに、東西南北に人が行き交ってる場所でした。
だから「いってらっしゃい おかえり 釜ヶ崎」と書いたのもそういうこと。
ーなるほど。
最初、自分の顔を出すのはいややってんけど、みんなが喜んだりしてくれるんやったら、ピエロになってもええかな、と。街のためになるんやったらええかなと思って。
ーさすが、西成のミスター・ボランティア。
いや、でも、もう5年くらい経ったし、お金もかかるからどうしよかなと思ってて。あの看板のギャグの旬も終わったと思うし。
ーいや、あれはまだ面白いですよ。「負けない」という言葉は?
うん。今はお金出せばなんでも買えるような時代やけど、そこで勝とうと思わんと、価値観を変えて、そんな時代には負けない、というメッセージで。でも、あの看板、年間100万以上かかるねんで…。
ーえーそうだったんですか。
夜はライト点けるから電気代とかもかかるし。ほんで、なぜか拝んでるおっちゃんとかもおるし。お坊さんと勘違いしてるんかもしれん。看板の前の薬屋さんのおばちゃんが、今日も何人か拝んでたよ~って。そんなん言われたら外しにくいやん。どうしたらええんやろな(笑)。
ー(喫茶店の方:ごめんやけどちょっと用事ができて、もう閉店していいかな)わかりました、大丈夫です。SHINGOさん、本日はありがとうございました。では、環状線で帰りましょう。
取材・文:中村悠介 写真:原祥子 編集:竹内厚