4.お持たせの心得
石濱さんのことを知ったのは、7、8年前、中崎町のスペースで演奏を聞いたのがきっかけだった。
シタールという楽器の存在もその音も生で聞くのははじめてだった。未知の音楽との出会いにただただあっけにとられていたと思う。
そんな石濱さんにお会いするということで、今回は、オーストラリア産で、牧草のみを食べて飼育された牛の肉「グラスフェッドビーフ」を手みやげにしてみた。
結果から書けば、これはハズレだった。
商品そのものがということではなく、石濱さんに持って行くものとしては、もっといいものがあったと、石濱さんのお勝手に踏み入れた瞬間、直感的に感じてしまった。ちなみに、私の頭の中をよぎったのはアルコールだ。
誰かに何かを持って行く手みやげというのは、それがどんなに些細な場面であっても悩むものだ。
少なからず、喜んでもらいたい、でもそれを渡すことで、気を遣わせてもいけない、その絶妙なバランスを自分と相手との関係性や相手の好みなど総合して決める。
万人にとって、これをもって行けば気に入ってもらえるというものも存在はしない。
だから私は、百貨店で目についたものを購入して手みやげに、ということは、滅多なことがない限りしない。なぜなら私とその商品の間には、何の関連もないから。少しでも何か話ができるものをと思うからだ。
とは言え、今回は、あまりにも未知な面に賭けて関係性を演出しすぎたあまり、空回りな手みやげになってしまった。
→5.棚の中のスパイスへつづく