多屋澄礼(音楽ライター、翻訳家)
#1 渋谷から五条へお引っ越し
すでに知っているお店だってNewに見えてくる。
東京のシティガール目線で綴られた『New Kyoto 京都おしゃれローカルガイド』。
今回はその著者である多屋澄礼さんがゲストです。
澄礼さんは2013年11月、京都にお引っ越し。
彼女が経営する渋谷の人気雑貨店[Violet And Claire]も京都へやってきました。
お店が移転した先は、五条は鴨川にもほど近い、大きくて古い一軒家。
その名も「五条モール」。
それぞれの部屋に古本店、アトリエ、喫茶/酒場、ギャラリースペースなどが入居し、
一軒まるごとみんなでシェア。ここでお話を伺いました。
なお、この取材の後、Violet And Claireは、
今度は京都の出町柳へと移転しています。
多屋澄礼
音楽ライター、翻訳家、女の子だけのDJグループTwee Grrrls Clubのリーダーなど。著作に『New Kyoto 京都おしゃれローカルガイド』『フィメール・コンプレックス(彼女が音楽を選んだ理由)』、訳書にアレクサ・チャン『It』など。先日、オーナーをつとめる雑貨店[Violet And Claire]を出町柳[S.O.U.]に移転オープンさせたばかり。
https://www.violetandclaire.com/
まず、なぜ京都に? 東京生まれ、ずっと東京育ちですよね。
多屋:東京は池袋育ちで。ひとり暮らしをしていたときは、代々木上原や富ヶ谷に住んで、渋谷のお店まで通ってましたね。旦那さんが京都出身ということもあって京都の友達ができたり、いろんなつながりができて。それで引っ越そうか? って。
いきなり思い切って?
その背景には、まず東京の家賃が高い! ということがあって。もうバカみたいな家賃を払ってることに嫌気がさして、賃貸の更新が切れるタイミングで。でも、違う街に自らの決断で住むということは初めてで…。
やっぱり不安でしたか。
もちろん東京の方が友達は多いし、仕事もうまくできるのかなとすごく考えましたね。友達もできたとはいえ、京都のひとのことをそこまで知っているわけじゃないし。私は京都で商売していけるのか、 怒られたり、いじわるとかされたらいやだな(笑)って。
お話は五条モール2階の小さなレンタルスペース8にて。1日3000円から借りられるそう。
これまでにお仕事で京都には何度も来てますよね。
限られた場所ですけどね。(丸太町のクラブ)METROにDJで呼んでもらったりとか。初めて京都に来たのは修学旅行です。グループ行動しないといけないのに、個人的に文通していた音楽友達のOLの方と待ち合わせをしたり、(レコード店の)ZestやJET SETに行ったり。私の中で京都のイメージは(雑誌の)『オリーブ』の京都特集ですね。その憧れがあったので、修学旅行なのにめちゃくちゃお金遣っちゃって。お土産も買えなくて親に怒られましたけど(笑)。京都といえばレコード屋、でしょ?って。
東京の方がレコード屋さんは多いでしょう?
京都というカルチャーを含めての憧れ、ですね。その当時は(京都のアーティストの)HALFBYとかが自分にとってのアイドルだったので。だから、京都に移住するのは憧れ、だけどチャレンジだったんですよ。
なるほど。どうしてお店は五条モールにしたんでしょう。
仲のいい京都の友達に教えてもらったから。
渋谷のど真ん中から五条へ。それも、もと遊郭のあったエリアに。
都会からすごいところに来ちゃったなとは思いましたけど、ここイイじゃん、って。部屋の改造もありだったし、自分のお店っぽくできるかなって。
渋谷のお店は超がつくほど忙しい人気店だったんですよね。
ある時期はそうでしたね。もうオープン前から待ってるひとがいるし、問い合わせもすごくて、じゃんじゃん電話が鳴って。でも出られない、というか出ない(笑)。
スゴい。
だって、もうその商品ないんですもん(笑)。向こうにしたら、あるモデルの女の子がつけていたひとつのアクセサリーだけがすべてで。東京のひとのモノに対しての執着心はすごい。
ここはのんびりしてますね。さっきから猫がうろうろしてます。
楽ですね。それにお客さんもピンポイントじゃなくて、ここに来ればいろんなお店をのぞけるし。モールというだけあって、入口がワイドというか。遠くから来られると、間違ってイオンモールに行っちゃうひともいるんですけど(笑)。
それにしても五条モールのみなさん、仲良さそうですね。
家族みたいですね。下宿にいる気分かな。近所のひと達ともすっかり仲良くなったので、いきなりブリ大根をくれたり。
なかなかもらえませんよ、ブリ大根は。
きっとないですよね。仕事のやり方もみんな自由で。いま下鴨に住んでるんですけど、鴨川沿いをここまで自転車に乗ってくると、ああいいな、って。これも渋谷じゃありえないですよね。
文:中村悠介 写真:沖本明
お引っ越しをして、自転車で川沿いを通勤。って京都人でもうらやましいスタイルに。次回は彼女のそんな生活から綴られた『New Kyoto 京都おしゃれローカルガイド』についてもお聞きします。
→#2 京都で自分の好きな空間を