耐震&リノベでイメージ一新!西長堀市街地住宅
船場地区を中心に大阪の都心には歴史ある建築が多く残り都市の魅力をつくっています。これらの建築群を大阪市が「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」として選定していて、その中に西長堀市街地住宅も選ばれています。そんなヴィンテージビルディングの歴史に想いを重ねながら耐震改修と共用部などの改修が行われました。
~マンモスアパートの誕生~
西長堀市街地住宅は、まだ高層住宅が珍しかった昭和33年に将来の都市型住宅のモデルを目指して建設されました。当時周辺には高層建物がなく、「マンモスアパート出現」という新聞記事が掲載されて以降、マンモスアパートが愛称となったそうです。
当時最先端の設備として、エレベーター、電話交換室、バルコニー、水洗式洋風トイレ、タイル張りのバスルームなどが備わっていました。
全長約80メートルの外壁に、縦スリット窓がリズミカルに連続する特徴的なファサード。当時は長堀川にその美しいファサードが映し込まれ、まるで水面に浮かぶ大きな船のようでした。
建設当時の西長堀アパート。垂直性をもつファサードが長堀川に映える
~歴史に込められた想いをそのままに~
耐震改修は、柱の増打・鉄板巻・カーボン巻、梁・壁・床の増打、壁・ブレースの設置等の工法により、地階からペントハウスまで多数の部位の補強をする難易度の高い工事でした。やむを得ず部分撤去する内外装では、素材の再利用や類似素材によるタッチアップを丁寧に実施。外装の空洞ブロックは代替品が入手不可能なため、ペントハウスへの鉄骨ブレース搬入の際、ブロック壁の撤去を回避し、分割したブレース・パーツのモックアップによる検討を経て階段から搬入されました。
ブレース設置個所の外装空洞ブロック壁(施工中)
リノベーションデザインにおいても、改修前のデザインとこれまでの暮らしの歴史へのリスペクトを共有。特徴的なストライプ状のファサードをエントランスまわりのパーツの構成要素に取り込み、ファサードと響きあうデザインが施されました。
ルーバー壁・天井・庇がファサードとシンクロ
老朽化したバルコニー手すりの改修においてもファサードのイメージを継承するよう配慮されています。
After
Before
エントランスのサインはモダニズム建築ならではのペントハウスの構成をモチーフとしてデザインされました。西長堀アパートの文字は歴史ある字体を継承。明かりが灯るとガラス面にアルファベットの文字が浮かび上がります。
新たにデザインされたサイン
歴史ある字体
エントランスへの段差を解消するとともにピロティから中庭側のメールコーナー外部までをつなげるデッキ空間を新設。中庭の舗装も新しくなりました。
前衛美術家の吉原治良さんによる壁画は、建設後に設けられた談話室の間仕切りにより鑑賞できない状態でしたが、空間の再配置によりエントランスホールのアイストップとなるよう復元されました。この改修により建設当初のゆったりとした広さのエントランス空間が復活しました。
After
Before
左)改修によりエントランスホール内に再び現れた吉原治良氏の壁画 右)吉原治良氏の紹介ボード
生活情報のサインやピクトグラムには、丸みのある字体を継承しアレンジするなど、新しさの中に懐かしさを感じさせるサインデザインとなっています。
所在地:大阪市西区北堀江四丁目2番40