奈良でひっそり、のほほんと暮らしている。詩集『歩きながらはじまること』、『光ったり眠ったりしているものたち』など。年明けごろに、実用的な非実用書を出版予定。

10月3日

今日も澄みきった空。梨のスムージーを作る。
自然豊かな場所であるが、不便といえば不便なので、家人はクルマに乗っている。1996年式フィアット・パンダ。5速マニュアルのこのクルマに乗りたいがために、家人は限定解除までした。僕も、モノとしての佇まいがとても気に入っている。イタリア風の侘び寂びの世界。その簡素さが、美しさを生みだしている。
走らせると子犬のような動きをする。たまに具合が悪くなるので、非実用的な実用車だとおもう。
僕の主な移動手段は、自転車と電車と自分の両足。パンダとは、たまに遊ぶ。
晩ごはんを食べていると、この秋はじめて猫が膝元にひょいとのってきた。お互いあたたまる。

10月4日

朝、曇り空。また台風が来るらしい。
小雨の中、阪急電車に乗って水無瀬駅で降りる。駅前の本屋さん、「長谷川書店」の長谷川さん、奥村さんとお昼ごはんを食べる。ひとつお願い事をして、いろいろとふしぎな話をする。道路で寝る、一年が二年半、存在の不確かさ、神さまからの合図などなど。
ハセショでは、よく分からない長編小説が好きなので、トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』を買う。
最近、寝る前に埴谷雄高の『死霊Ⅰ』を読みかえしている。今ちょうど、黒川建吉と首猛夫が、屋根裏部屋でほぼ意味不明の会話をしているところ。風のように眠気がやってきて眠る。

10月5日

ドングリが、屋根をゴコンと響かせる。
我が家には、樹齢百年ほどのクヌギの大木が聳えている。樹形の美しい木で、秋になるとドングリをいっぱいこしらえる。夏には、カブトムシやクワガタがやって来るし、冬には、その落ち葉で焚き火をしている。春になると、それは見事な芽吹きを見せてくれる。
四季折々の風物詩を感じさせてくれる大切な木だ。
しかし、今日は暑いなあ。

10月6日

まだ暑い朝だな、とおもっているとものすごい雨が降ってきたりした。やっぱり台風も近づいてきたようで、すこし混乱する。 午後、路地奥の喫茶店「パビリオン」に立ち寄る。このお店は、もうすぐ開店9周年なので、9年通っていることになる。しずかな路地奥からの眺めは、当時から何も変わっていない。どこかしらなごんでしまう、おだやかなよい風景。

2018年4月1日にスタートしたリレー日記です。1週間単位でさまざまな方に暮らしの日記を執筆いただいています。

とは

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