福岡・六本松、SEN & CO. HOSTELで寝て起きて
9月のはじめ、編集部の数名で向かった福岡。ブックスキューブリックでの『#カリグラシ』出版トークイベントを起点に一泊して、気になる方々や場所を2班に分かれて取材してきました。「福岡シリーズ」はもう楽しんでいただけましたか。
編集部の面々の過ごし方の一つとして、宿はそれぞれ好きに選ぶというスタイル。みなどんなところに泊まったのかなと思っていたら、民宿、Airbnb(エアビーアンドビー)、ホステルと、さまざまに駆使していたのが、なんとも面白いのでした。みな一律宿代は一泊3500円くらい。
そんなわたしは、宿はもっぱら設備やアメニティ重視のホテル派だったのですが、OURS.サイトをはじめてからというもの「寝るところを借りる」という考え方に変わり、運営している人の顔が見えやすくて、泊まっている人ともほんのりと交流できるその土地ごとのホステルも選ぶようになりました。
ではホテルとホステル。どうちゃうの? そんな声が聞こえてくるようです。少し解説すると、ホテルは完全個室であるのに対して、ホステルは個室の他にドミトリー(相部屋)があること。畳の部屋に敷布団を並べる場合もありますが、2段ベットで4人~10人くらいの部屋が主流。各ベッドにはカーテン、コンセント、ライト、ハンガーなどが。シャワーも洗面もトイレも、すべて共用で誰かと順番に使います。ホテルは部屋を借りる、ホステルはベッドを借りる、というイメージでしょうか。ここ5年ほどで、デザイン性や面白いコンセプトを駆使したホステルが増えていて、その魅力と多様性には目を見張るものがあるのです。
今回の福岡では何の前情報もなく、地図を広げて目に入ったのが、大きな池のある公園。その近くの「六本松」という地名から探してみることに。そこで唯一ホステル運営をされていたのが「SEN & CO. HOSTEL」でした。
静かな住宅街の中に、3階建ての少し大きな家のような建物がしっとり溶け込むようにありました。1Fのカフェ兼フロントでチェックインだけを済ませ、取材とトークイベントへ。夜は23時頃に再び「SEN & CO. HOSTEL」に。先に教えてもらっていた扉の暗証番号を押し、静かに靴を脱いで、そおっと階段を上がりました。2段ベットの下の段の足下に荷物を置いて、シャワーの準備。しまった、ここはバスタオルがセットではないことに、このタイミングで気づきました。タオルを借りるにもフロントは夜22時まで。仕方なく、手持ちのハンドタオルでなんとか拭くことに。玄関横のシャワールームで外国人女性と軽く会釈して、順番に髪を乾かし、またそおっと寝床に潜り込んで、上段で眠る人の気配を感じながら眠りにつきました。
朝。また別のどこかの国の女性たちと軽く会釈してからトイレへ。朝7時半には、1階のカフェスペースで予約していた朝ご飯。ホステルは素泊まりが多い中、ここでは地元の魚や野菜といった食材に、味噌から手作りという味噌汁まで登場。配膳してくださった男性は、オーナーの濱口仙太郎さんでした。
濱口仙太郎さんは家業の大家業を継いで、そのひとつにこのホステルを運営。吉原住宅の吉原さんにも指南を受け、1階はカフェ兼フリースペース、2階は14のベッド、3階は賃貸住宅として物件をフル活用。
濱口さんからは、六本松というエリアがいま大きく変化していることを教えていただきました。2009年に九州大学の六本松キャンパスの移転にともなって、一時はまちが落ち込んだような時期もあったのですが、2011年の震災を境に移住者が少しずつ増え、まちの再開発もすすんで来たとのこと。2017年10月にはキャンパス跡地に日本一の最新プラネタリムを備えた大型複合施設「六本松421」がオープンしました。他にもこれまでのまちの歴史やおすすめのお店のことなどを次々に語ってくださる濱口さんの姿は、まさに“まちのフロント係”のようでした。
そう考えると、大げさかもしれませんが、ホステルってその土地そのものに「泊まる」ってことかも。
またひとつ、ホステルの楽しみ方を教わった福岡の取材旅となりました。
濱口さんにオススメしてもらったひとつ「マツパン」。古民家を活用した店舗。常に列が出来ている元気で明るいお店。帰りの新幹線で食べるパンをたくさん購入しました。
マツパンの向かい側の風景。昔ながらのまち並みも残り、楽しい小商エリアが続きます。
梅光園緑道。旧国鉄筑肥線跡地の一部約1kmを再活用した散歩道。気持ちがよい。
UR都市機構は大規模なまちづくりに関わることもあり、後に聞くところによると、六本松キャンパス跡地もそのひとつでした。旅の終わりの夕暮れ。緑道に沿うように佇むUR団地にも出会いました。
写真と文:平野愛
SEN &CO HOSTEL
https://senandco.jp
アーベインルネス梅光園
https://www.ur-net.go.jp/chintai/kyushu/fukuoka/90_1640.html