2017.10.30
with
ANI(ラッパー)、セク山(DJ)
around
河原町~丸太町~西陣団地〈京都市〉
こんなに散歩が似合うラッパーって他にいるんでしょうか。
今回、“さんかつ”に登場いただくのはスチャダラパーのANIさん。毎日、東京の駒沢公園をブラブラしている散歩人です。
この日はお仕事(「ダサい曲をかけるパーティー」というイベントに出演)で京都に。ということで、同行するDJの通称“セク山”さんとともに市内の中心部をブラブラ、ダラダラと参ります。
ANI
ヒップホップグループ、スチャダラパーのMCで、“フンイキ”担当。2010年には写真集『ブリングザノイズ』(リトルモア)を発表。ロボ宙、AFRAとともにDONUTS DISCO DELUXEでも活動する。神奈川県川崎市出身。1967年生まれ。
セク山
DJなど。2015年にはオフィシャル・ミックスCD『SEXYMUSIC~FANTASY~』(ULTRA-VYBE,INC.)をリリース。神奈川県川崎市出身。今後の予定、その他はtwitterにて。
→ https://twitter.com/sexyamaguchi
#01
ポケモンゴープラス/若貴の立ち読み/水戸黄門の合間に/VINYL7
—こんにちは。今日はよろしくお願いします。
ANI:なんか浴衣のひといるけど、今日なんかあるの?
—観光客のレンタル着物とかでしょうか。
ANI:やっぱ京都だから?
—だと思います。
セク山:鎌倉とかも今そんな感じですよね。
ANI:へー、そうなんだ。
—おふたりは京都によく来られます?
ANI:この先、けっこう来るよ、ライブで。学祭とか。アレ? 違うかも。最近は、今年のお正月に来た。最近、来るときはまとまって来るけど、来ないときはなぜか全然。
—セク山さんは?
セク山:最近は大阪にDJで来て、それで京都に寄ったりですね。
—セク山さん、腕になにか付けていますね。あ、光った。
セク山:いま来ましたね。ポケモンゴープラスです。…いま、捕まえましたポケモン。歩きスマホじゃなくなるやつですね。
—なるほど、時計型だから。何のポケモンが捕まったか、あとで確認するのが楽しみですね。(古書店で立ち読みを始めるANI)若貴の本?
ANI:平成4年の頃の。若いなぁ(としばらく立ち読みに没頭)。
—そろそろ歩きましょうか。そういえばANIさん、5年前くらいに「京都国際舞台芸術祭」でASA-CHANGの舞台出演のために京都に滞在されてましたよね。
ANI:あのときは1週間くらいいたね。四条大宮のホテルに。あとは、おととしの『水戸黄門スペシャル』の撮影でも1週間くらい京都にいた。
—へー。最近では映画『リリカルスクールの未知との遭遇』、ドラマ『孤独のグルメ』などに出演されて、これからは役者の道も?
ANI:いや〜、ないねぇ。
—腕に覚えは?
ANI:まったくなし! 出てるっていってもただ映ってるだけ、みたいな。『水戸黄門』はセリフ1コくらいしかなかったし。目立つために、もうちょい動きを大きくしないといけない。それが分かった。
—おー、役者っぽいです。撮影の合間にはなにを?
ANI:ロケは朝早くてお昼には終わり、みたいな感じだったから映画観たり、太秦で弥勒菩薩を見たり、散歩したり。いつもホテルの自転車を借りて商店街の銭湯に行ってたね。
—湯船で演技を考えたり?
ANI:ないねぇ。
—ラップの歌詞を考えたり?
ANI:ないねぇ。いちおうパソコンは持ってきてたけど。ぜんぜん浮かぶこともなく。嵐電に乗ってみたり。
—散歩でもあり観光ですね。
セク山:ちょっとここ「VINYL7」寄って行ってもいいですか?
—レコード店「VINYL7」、行きましょう。
セク山:ここは関西に来たら必ず寄りますね。こんにちは。(店主の松本さんに)お世話になってます!
—こんにちは。松本さんから見ておふたりの印象は?
松本:(セク山さんは)裏表のない人物というか。ANIさんは憧れの存在じゃないですか、そりゃ。本人の前で言うのもあれですけど。スチャダラパーと脱線3に憧れて、今こういう仕事をしてるわけですから。—ANIさん、聞いてます?(入店するなりレコード探しに没頭していたANI)
ANI:あ、聞いてます聞いてます。感動してたとこです。
—ANIさんは今もレコードはよく買います?
ANI:たまに買う(と言いつつ没頭。しばしレコードを漁るふたり)。
草野球ならでは/散歩の途中で/鉄棒はぶら下がる/浮世絵の立ち読み
—そろそろ行きましょうか。この辺りで寄りたいところあります?
セク山:昔ながらのスポーツ用品店があるんですけど、そこ行きたいですね。そこで売ってるものの様子がちょっとおかしいというか。
—寺町商店街のとこですね。行きましょう。
ANI:こうやって歩くと見えてくるけど、意外に京都って新しい建物があるね。
—見上げると新しいマンションが並んでますよね。あ、ここですね、スポーツ用品店。
セク山:あー、帽子の数がちょっと少なくなってるな。前はオリジナルの野球帽が多かったけど。
—野球ユニフォームもたくさんありますね。ANIさんは野球やられてるんですか?
ANI:やってますよ。草野球。レフトで打順は7番か8番くらい。でも、来た人全員が打てるシステムだから打順11番とかもいる。
—楽しそうです。そういえば、ANIさんは駒沢公園を毎日、散歩されていますよね。
ANI:雨降ったときや仕事のときは行けないけどね。でも基本、犬の散歩してるだけだから。散歩係。散歩しないと調子悪くなるから。犬が。
—散歩するのはいつも朝ですか?
ANI:夏は夕方かな。犬の具合に合わせて。昨日は夜に行ったけど。
—それじゃ犬を飼ってなかったら散歩してませんか?
ANI:やってないと思う。犬のため。
—愛犬家ですね。いつから散歩されているんですか?
ANI:犬を飼い始めて、だから12年くらい。犬が若い頃は駒沢公園を2周したり。でも、いまだに散歩行くとき、家でぜんぜん捕まらないの。行きたくないわけじゃないとは思うんだけど、素早いから全然捕まらない。奥さんの言うことは聞くけど、俺の言うことは聞かない! みたいな。
—(笑)散歩の時間はどのくらい?
ANI:50分くらいかな。
—それが自分の健康のためにもなってた、とかは?
ANI:うーん。ないかな。
—たまに走ったりとかは?
ANI:それもないなぁ。公園の鉄棒にはぶら下がるけど。ぶら下がって10回揺れる、っていうのはいつもやってる。
—揺れるんですね。懸垂じゃなくて。散歩のルートは決まってます?
ANI:最初は、毎回おんなじコースってのもなんだから東西南北いろんなところを歩いてみたりしたけど、もう決まってるね。
—散歩中にファンの方に声かけられたりは?
ANI:ないね。知り合いに会うことはあるけど。2回くらい(木村)カエラちゃんにあった。自転車に子供乗せてたね。あとは小山田(圭吾)くんと会ったり。
—へー。
ANI:あ、欽ちゃんも見た。24時間マラソンのときだと思うけど、欽ちゃんファミリーがみんなで走って練習してた(笑)。
—いいですね(笑)。散歩の必須アイテムは?
ANI:たばことケータイ。財布は持って行ったり行かなかったり。そういえば、駒沢公園って前は自転車を借りられたの。
—散歩の途中に自転車を?
ANI:そう。1時間200円のところを無理言って30分100円で借りたり。それで公園を走ったり。でも、もう自転車の貸し出し自体がなくなった。
—残念。セク山さんは散歩されますか?
セク山:家から駅までが遠いので自動的に散歩になってますね。あとはこのポケモンで、ですね。
ANI:あー。
セク山:でも、ポケモンゴープラスでは雑魚しか捕まらないですけどね。強いのはちゃんと自分で頑張らないと…。
ANI:お、こんなところに(歌川)国芳(と立ち読みをはじめる)。
—江戸時代に創業したという古書店ですね。店頭からシブい古書が並んでいます。浮世絵に興味あるんですか?
ANI:ほら、ちょうどこれ持ってる(と手ぬぐいを取り出す)、猫でガイコツ!
—おー。
セク山:いいですね。
ANI:だんだん和風のものの良さが分かってきました、わたくし。ナ・ル・ホ・ド、と。日本画とかギンギンに分かってきた。ナ・ル・ホ・ド、と。
—なにかキッカケが?
ANI:やっぱりおっさんになってきたな、と。落語もナルホドってなってきたり。でも、若い子にはまったく響かないね。
—そういえばANIさん、50歳おめでとうございます。なにか達成感は?
ANI:ない。これからあるのかなぁ。いや、もうないのかも。
—思ってた50歳と違うってことですか?
ANI:もうちょいランクが上がるのかなと思ってたけど。
—どういうことです?
ANI:みんなに大切にされるとか、分かりやすく言うとギャラが上がるとか。でもそういうの、ない! なんだったら下がってるみたいな。
セク山:(笑)
—セク山さんから見たANIさんとは?
セク山:これまで全部CDも買ってますし、テレビや雑誌で見てたANIさん、なんですが、実際にお会いしてみると…そのまんまっていうのが驚きなんですよね。
ANI:じつは◯◯だった! みたいなのないの?
セク山:ないです(笑)。この前、スチャダラの楽屋にいたらANIさんとBoseさんがほんとにずっとゲームの話をしてるんですよ。それを見たときに、ああ、オレの信じてたものは間違いなかった!って思いましたよね。
—なるほど。
ANI:最近は仕事以外でメンバーにそんなに会わないじゃん? だから会ったときにまとめて話さないといけない。昨日もリハがあったから、ドラクエの話をしたけど。
→ANIさん、セク山さんとの「さんかつ#02」
次回は京都御所方面へ。特になにかが起きる、というわけではありませんが、ANIさんといえばのダラダラ・ムードは今の時代に足りないもののような気がしてくるはず。ピース。
文:中村悠介 写真:原祥子 編集:竹内厚