5. えり子さんからのメール
私が子どものころ、キッチンは、仕事で忙しかった母といっしょに時間を過ごせる貴重な場所でした。母は料理が上手で、当時はまだ珍しかったイタリア式のパスタやオーブン料理も作ってくれました。ときどき教え子の音大生たちを招いてホームパーティをすることがあり、一人っ子の私はそれがとても楽しみでした。
私自身も小学校の高学年になると、お手伝いだけでなく、ひとりで食事の支度をするようになり、料理熱がこうじて、家にあった「西洋料理」という本のレシピを片っ端から作りはじめました。今から考えると信じられないほど手の込んだ料理も作っていたのですが、料理人になりたいというような野望をもっていたわけではなく、ただ両親をびっくりさせたい、喜ばせたいという単純な動機からでした。
あの時が私の人生における料理熱のピークで、かなり手抜き料理が多くなってしまった今の私が、「料理好き」と胸を張っていえるかどうか。でも、及ばずながら、人を喜ばせたいという気持は残っていて、それがあの無茶な大人数パーティにつながっているんだと思います。
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