OURS.のデザイン担当でもあるデザイナーの前田さん。
自身が入居するシェアオフィスの本棚から得たある気づきをもとに、ささやかなプロダクトを作ったそうです。かつてどの図書館でも使われていたアレ、今あらためて使ってみたい気持ちになりました。
本棚を開く試み
今日は、僕が普段仕事をしているシェアオフィスと
そこから生まれたプロダクトについてお話ししたいと思います。
僕は大阪の阿波座にある「FACTO」というシェアオフィスに2年ほど前から入居しています。オフィススペースとイベントスペースが同じ空間の中に併設された施設で、隙間の空いたパーティションが作り出す半セパレートな状況がFACTOの特徴。ある種のパーソナルでありながら、パブリックな空間が生まれています。
職業柄、デザイン書籍や写真集などをいくつか所有していますが、シェアオフィスの同居人である建築家さんもまた、建築に関する書籍などを多く所有されており、お互いが書籍を共有し合うといった状況がたびたび見受けられるようになっていました。本来、パブリック性を高めるための手段としても編み出された出版物ですが、逆に今では個人の本棚に収まり、そのまま抜け出さなくなるケースも多々あるのではないか。シェアが進むFACTOの本棚を見ていると、本にまつわるそんな矛盾に気づきました。
それがキッカケで生まれたのが「LIBRARY CARD」。簡単に言うと、図書館にあった「図書カード」です。
誰が、どの本を、いつ借りたのか、そして返したのかを記入して、個人の書籍をもっと他者に共有してもらおうという意図でつくりました。FACTOのようなシェアスペースや学校、会社などのパブリック性の高いスペースで、このLIBRARY CARDが本棚を開くためのツールとして機能してもらえればと思っています。
シェアオフィス「FACTO」で生まれたLIBRARY CARDということで、狙ったかのような話ですが 笑
どちらにもある「ゆるり」とした状況が発生しています。
LIBRARY CARDは、厳密に制約を設けて使用する感じでもなく、半分以上は信用貸しのような使われ方が多いよう。FACTOに関していえば、入居者を貪欲に増やすという感じでもなく、来たいと思う人が来ればいいという雰囲気が生まれ始めているように思います。
これらは付かず離れずの関係性と言いましょうか、厳密な契約関係や友達関係のようなものとも少し違う、どこか「ゆるり」としたものがあります。貸し借りの世界にはそのような空気も漂っているのでしょう。
クリエイターズシェアオフィス FACTO
https://facto.jp/
LIBRARY CARD
https://www.librarycard.jp/
前田 健治
アートディレクター/デザイナー。mém代表。コンセプトワークからブランディング・グラフィックデザイン・デジタル分野まで、さまざまな領域でのデザインを手がける。
https://www.m-e-m.jp/