西尾:僕がやってきた活動に一貫した考えですけど、アートでいえばつくり手と受け手、ファッションなら生産者と消費者。ここに分断があるのが問題だと思っていて、誰もがつくり手になれるんです。少し前まで、家で服をつくるのは当たり前だったでしょう。
衣服との関わりがいつの間にか凝り固まってますね。今回の「NISHINARI YOSHIO」ブランド立ち上げも、服を交換するような西尾さんの作品も、服にまつわる既成概念をほぐすようなこと。それって当サイトOURS.が掲げる「カリグラシ」にも通じるなと思います。
西尾:うん、そうですね。僕のプロジェクトでも、《パブローブ》というパブリックなワードローブをつくる試みがあります。自分ひとりでワードローブを所有するよりも、みんなで服を共有するほうが面白いんじゃないかってことでもあるし、僕がやってきた服を交換するプロジェクトをよりパブリックにしたものでもある。ただ、これをやってみて難しいのは、服を共有するってことに人は慣れてないから、買ったほうが早いんですね。
貸し借りするほうが手間がかかると。
西尾:そうです。買うほうが手軽にできる。古着屋で服を買うことって、大きな意味のシェアだともいえるので、お金が介在してるかどうかの違いとも言えるんですけど。
この世にすでに生み出されたあらゆる服のシェアが古着だともいえますね。
西尾:そうですね。あと、《パブローブ》のためにって制限を設けずに服を持ってきてもらうと、借りたいような服があまり出てこないんです。服はたくさん集まるんだけど。だから、2016年の「あいちトリエンナーレ」でやったときには、大切な服を持ってきてもらうようにしました。ミュージアムに寄贈するつもりで大事な服を持ってきて、みんなのワードローブとしてちゃんと育てていこうよって。
2016年、あいちトリエンナーレで実施された《パブローブ》の様子。 photo:菊山義浩
他人と服を交換する。ワードローブを共有する。そういう機会がもっとあればいいと思います。
西尾:最初からハマる人もいれば、抵抗を感じながら、やってみたら喜んで参加するという人もいます。この場所「たんす」に僕が来たときも、おばちゃんたちはすごく古着や僕の考えに対しての抵抗があったんです。古着そのものが嫌だって。でも、やっていくうちに、最初にそう言ってたのを忘れたかのように、どんどん古着を作り替え、作り替えた服を着てくれましたけど。
思いこみ、慣習でそうじゃなきゃと思ってることが多いんでしょうね。
西尾:ほんとそうなんです。遊びながら、おばちゃんも僕もゆるやかに自分の当たり前を変えることができていると思います。そうしてつくられた服が、アートとして敬遠されるものではなく、身近な服として多くの人に届くといいなと思います。
文:竹内厚 写真:中村寛史
(2018年2月20日掲載)
会期:2018年2月24日(土)~3月11日(日) ※月曜休
会場:大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco]1F
(大阪市西区江之子島2-1-34)
会場:kioku手芸館「たんす」
(大阪市西成区山王1-11-5)
…ファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」の展覧会と販売も。
https://breakerproject.net/