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  • 西尾孔志が聞く、『寝ても覚めても』濱口竜介監督インタビュー No.1

西尾孔志が聞く、
『寝ても覚めても』濱口竜介監督インタビュー

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現代日本映画の次世代を担うと期待を集め、世界の映画祭で熱い注目を浴びる濱口竜介監督。今回、初のメジャー作品として、東出昌大を主演に迎えた『寝ても覚めても』が公開されました。そんな濱口監督に、大阪在住の映画監督・西尾孔志がインタビュー。家のこと、川のことについてもお聞きしました。


西尾:今回、僕は濱口映画の過去作を観てきている者として、「一番過激な主人公だな」と思いました。日本で過激な映画というと「キレる暴力」みたいな暴力描写がまずあって、それがどんどん飽和状態になっている中で、「こういう種類の過激があったか!」と思って目からウロコが落ちました。

濱口:新たな過激を感じたと。

西尾:はい。愛情や恋愛って、社会とか世界に対してこんなにも激しくぶつかれるのかと。最近の日本映画ではあまり観たことないと思いました。濱口監督としては、これは今やるべきことだという意識はあったんですか?

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

濱口:今やるべきだというか、4年ぐらい前から始まった企画だったので、西尾さんが言われるような、特に恋愛に対する抑圧的な流れって、ベッキーの不倫騒動以来じゃないですか。だから、気がついたら、まさにそういう時代にこの作品をぶつけることになってしまったというほうが大きいかな。でも、昔からそういう映画もあると思うんですよね、増村の『清作の妻』(1965年)とか。

西尾:僕の中でも増村保造の名前は思い当たってたものの、あの監督に似てますねというインタビューはよくないかなと(笑)。けど、濱口監督からその名前が出てきたので言いますけど、ほんと、増村ですよね。

濱口:『清作の妻』は、愛が完全に社会とぶつかるみたいな話ですけど、そういうヒロインが好きなんですよ、僕。そういうヒロインをもっと見てみたい、みたいな素直な気持ちが、この原作だったらできると思ったのかな。女性が自分の意志を貫く姿って、まあ、女性じゃなくてもいいのかもしれないけど、社会に対して人が意志を貫く姿を見たいっていうのがあるんですよね。

西尾:柴崎友香さんの原作よりも過激になってるんじゃないですか。まだ僕は原作を読んでないんですけど。

濱口:いや、原作の方がより過激だと思いますよ、僕は。むしろ映画はマイルドになってるんじゃないかな。周囲に理解されようがされまいが構わないという感じが、原作の方がより強いんです。ただ、原作だと、その人の行動原理とかってちょっとはわかるんですけど、映画でそれを観客にどうわからせるかを考えたときに、もうちょっと観客にとって理解できるヒロインにしたつもりなんですよね。

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

西尾:この映画って、共感をある場面ですごく拒絶するところがあると思うんですけど、そこに対する徹底ぶりというのかな、今までの濱口さんの映画にも気まずいシーンはたくさん出てきて、そこは濱口さんの得意なところだと思ってるんですけど。今回は、気まずい、和解する、気まずい、和解するという繰り返しがあったので、濱口さんもマイルドになったのかなと思ってたら、その先にとんでもない拒絶、気まずいのが来て、「うわー、これはよくできてるな!」と思いました。

濱口:ありがとうございます。でもね、これは、やっぱり原作の力があるんですよ。その言われるいちばん過激なところは、原作の展開を踏襲してますし、やっぱりそこが僕もいちばん原作を読んで、面白いと思った部分なんですよね。

 

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借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。

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