この春、10年間勤めてきた勤務先を退職された河野愛さん。新しい制作スペースを借りるべく、ただいま物件を探している毎日だそうです。そんな新生活を前に、『#カリグラシ』を読んでいただきました。


家の中の「適度な外」
text by 河野愛(美術作家)

20代の1年間、ロンドンのカウンシルフラットというUR賃貸のようなところに暮らしていたことがある。ちょうど一回り年上の日本人男性と、同い年のイギリス人男性との、不思議なトリオでの生活。

気配は感じるものの、深入りはせず、時折、キッチンで話す程度の仲の良さ。この3人での暮らしが、とても心地よかったのは、「適度な外」が、家の中に持ち込まれていたことかもしれない。

他人や外を家の中で楽しむための、もっとも日常的な方法がカリグラシであり、読後はじめて、茫洋としたかつてのロンドンでの1年に、名前がついたような気がしている。

河野愛

京都市立芸術大学大学院美術研究科修了の後、電通でアートディレクターとして勤務。布や糸、陶を用いたインスタレーション/美術作家として活動。美術ワークショップもおこなう。2017年4月より、京都造形芸術大学 染織テキスタイルコース講師。夫と犬と小鳥と大阪市内のマンション暮らし。

 

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