住まいを変え続けて、しかも、そのどれもが個性的な住まい方だという古市邦人さん。『#カリグラシ』を読んだ上で、自身のカリグラシ遍歴を振り返っていただきました。どうしてカリグラシなのか? そのひとつの答えをいただいた感じです。
text by 古市邦人(NPO法人スマイルスタイル事務局長/週末カレー屋「nimoalcamo」)
性格なのかもしれません。どうしても、1カ所に留まりつづけることができないようです。今30歳ですが、社会人になり、毎年といっていいほど引っ越しをしています。
これまでに借り暮らしをしてきた住まいは、たとえば、
a. 3階なのに駐車場2台分ぐらいの土付きベランダがあるアパート
b. 古い木造アパートを改造したシェアハウス
c. 日の差さない家賃3万の極狭アパート
d. Airbnbをやっている一軒家の1室
e. 自由に改造していいと言われている倉庫
aは朝起きたら目の前に土があるので開墾して野菜を育てていましたし、カウチサーフィンというSNSで旅人を泊める家としても時折開放していました。
dに住んでいた頃は、知らない外国人が毎日隣にいる生活でした。
今まさに借りているeは、2階を住み処にして、1階をカレー屋にしようとDIY中です。
どうしてこんなに、コロコロと住まいを変えてしまうのか…。
きっかけは、学生時代にオーストラリアでやっていた多国籍フラットシェアかもしれません。シドニーでは世界各国から集まる語学学生はみんな、お金がないからシェアして住むんですね。その頃から住まいでの暮らしの時間が、単なる「オフ」ではなくて、家での暮らしの時間も「体験の時間」という感覚になっている気がします。
そしてその体験は、実はその土地に根付いたものじゃないものが多いです。
暮らし系のSNS(カウチサーフィン、WWOOF、キッチハイクなど)が普及してからはなおさら「近くに住んでいるから」という出会い方は少なくて、「その住まいの性質で」という出会い方が多い。
「カウチサーフィンできる家だから」起こる出会い。
「Airbnbをやっている家だから」起こる出会い。
「シェアハウスだから」起こる出会い。
「カレー屋をやっているから」起こる出会い。
住まいを変えると、日々の暮らしが自然と変わっていくんです。
特にネットを通した繋がり方の変化はすごく早くて、面白い条件の家に住むと、自分の日々の暮らしの中の出会いが劇的に変わる。
カウチサーフィンをやっていた家に遊びに来たプロレスマスクを被ったメキシコ人、カレー屋をやっている家に訪れた菜食主義の日本人、そんな人たちには、その住まいじゃないと出会えなかったんじゃないかなぁと。
僕は、自分の人生の中でその時自分が欲している出会いを求めて、自然と暮らす場所を変えていっているのかもしれません。
借り暮らしって、僕の場合は結局、体験を借りているんですよね。
まだまだいろんな体験を欲している僕としては、当分、マイホームを持とうという気には、なれないです(笑)。

1986年京都生まれ。立命館大学卒業後、大手教育業界勤務を経て2013年にNPO法人スマイルスタイルへ入社。働く意志を持ちながらも、働く職場が見つからない若者たちの就労応援を行う「ハローライフ」など、主に就労支援プロジェクトのディレクションを担当。2016年より事務局長就任。プライベートで、週末に倉庫を改造したカレー屋「nimoalcamo」を小商いとして行う。