このコラムを書かせてもらうなかで、私はどうやら、街に存在する役目を失ったものに惹かれ、それらにもう一度光を灯したい、と思っていることに気付いた。今回も、そんな役目を失いつつある“電話ボックス”のお話。
電話ボックス。最近いつ利用しただろうか。そういえば、使っている人もあまり見かけなくなった。日本国内の公衆電話総数は、2000年には70万台を超えていたが、2014年には19万台まで減少しているという。(※1)
原因は、言うまでもなく携帯電話の普及だ。携帯電話は私が高校生の頃に登場し、今の日本では1人1台以上持つ時代に突入している。(※2)
今後、携帯電話がさらに世に浸透していけば、電話ボックスの需要がますます減っていくことは時間の問題だ(ただし、災害時用等で完全に無くなることはないらしい)。
京都・東大路丸太町の電話ボックス(赤いラインのタイプは今では珍しい)
この“街の負の遺産”を何に使えば良いだろうか。
できれば、街の“負”とされているものと掛け合わせて、ハッピーなしくみが作れたら最高だ。
そこで考えたアイディアが喫煙所。私は煙草を吸わないのだが、周りの喫煙者は吸える場所が減ったとしきりに嘆いている。ここ10年くらいで、世間も喫煙者にやたら厳しくなった。喫煙所にするだけでは嫌煙家には喜ばれないので、電話ボックスごとグリーンで囲う。外周4面のうち3面を緑化し、1面は広告を打つことで収益を得る。
役目を失った電話ボックスが、“外見はグリーンボックス&中身は敬遠されていた喫煙所”という誰しもハッピーになる解決法。街に点在しているので、コンクリートジャングルと化した都市を潤すポケットパークともいえる。しかも、電話ボックスは緑の少ない中心市街地ほど多く設置されている。
アイディアはかなり粗削りだし、実施までに課されるハードルは100個くらいありそうだけど、そう思い描いて、改めて電話ボックスを見直してみよう。少しまちの見方が変わると思う。
※1 2014年3月末 NTT東・西日本における公衆電話設置構成比推移
※2 2010年国勢調査122.6%
岸本 千佳
1985年京都生まれ。建築を学んだ後、東京の不動産ベンチャーに勤務、2014年より京都に戻り、フリーで不動産の企画・仲介・管理を行う。現在は、堀川団地再生や京都移住計画、DIYPなど不動産の有効活用の立場から、豊かな暮らしを提案中。