artproject_stage3
ディスカッション①後編
フィールドワークに参加した学生たちが、フィールドワークで体験したこと、感じたこと、考えたことを語り合ってくれた前編に続き、千里津雲台、高槻・阿武山について意見交換をしました。
~アートが生まれる学生のまなざし~
千里津雲台では住棟の間に駐車場があり、安全面を考慮したコンクリート製の車止めが設置されています。そこに、一人の学生が注目していました。「これを車止めとして見てしまえば、車の乗りあげを防ぐ設備の一つです。普通に歩いている人や住んでいる人には何気ないただの車止めに見えていると思います。でも、僕はそこにアートの芽を感じました。例えば、地面からニョキッと生えているような車止めにカラフルな靴下をはかせたり、紙で作った袋をかぶせたりするだけで、普通じゃない空間が生まれると思います」
思わず、谷悟先生も、「住民のみなさんと一緒に何かできると面白いなあと思います。例えば、自治会に手芸サークルとかがあれば、皆で人形を創り、かぶせるとその場所になんらかの意味が宿されることになります。普通の車止めが普通じゃなくなることに興奮して欲しい。それがアートの扉を開くことになる」とアドバイス。
アート作品にすることを考えて設置したわけではない車止めですが、芸大生のまなざしが加わると面白いものや美しいものに見え始めます。そこに、アートプロジェクトの真骨頂があるのだと、気づかされました。
~アートが点在する高槻・阿武山~
高槻・阿武山は、比較的新しくつくられた団地で、パブリックアートも多数点在し、バスが走る大通りの歩道にも、さまざまなアートが設置されています。それを見て、「人や犬の作品があったんですが、何を思っているのか分からなかったので、みんなで考えていくといいと思いました」と学生。ベンチなのに、なぜか真ん中に球体がある作品もあります。
高槻・阿武山7番街にある河合隆三氏の作品、『犬と友だち』
「そこに座らないと、二人で語れないような話って何だろう?と思うよね。真ん中の球体を挟んで向き合って座る時にどういう会話になるのだろうかと空想力をはたらかせることが大切なのです。僕たちは普通のベンチではない違和感に気づいたわけですが、住民の方に、このベンチはどうですか? どんなふうに使いますかって聞いてみるのも、そこにアートのヒントがあると思います」と、谷先生。
「アートは、自ら何も語らないと思います。見る人がどのように捉えるのか、どう感じるのか、何を思うのか。そこにアートの素晴らしさがあると思いますが、僕たち学生としての見え方、考え方を作品に加えて表現することも可能だと思いました。例えば、IT技術を活用して、色がついて見えたり、音を奏でたり、動き出したり……。作者の意図や作品の持つメッセージを、僕たちの目を通して、もっとわかりやすく伝えていきたいと真剣に考えています」と、2回生たちには、新しいアイデアの芽が膨らみ始めていました。
高槻・阿武山8番街にある川島慶樹氏の作品、『Mar Magician』
谷先生は、リサーチやフィールドワークが一番大事だと言います。どんどん外に出て企画を生み出す可能性を探求しながら、芸術計画学科生らしい視点とアイデアに期待して、アートプロジェクトを進めたいと考えています。
次回は、パブリックアートを創作した作家に、学生たちが体当たりのインタビューをします。
どんな展開になるのか、みなさん、お楽しみに!
撮影:長谷川朋也 etc