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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

親子3代にわたり受け継がれる、夏の風物詩


 7月29日(土)・30日(日)に富田団地(大阪府高槻市)の夏まつりは、自治会のみなさんが中心となり、大賑わいで開催されました。
祭りの準備、当日の和太鼓の演奏の紹介とともに、毎年楽しみにされている地域住民のみなさんの様子をご紹介します。

~祭り気分を盛り立てる、櫓の組み立て~
7月23日の朝、櫓(やぐら)を組み立てるためにユニフォームを着た男性たちが集まってきました。40代から70代の総勢15名は、地元の玉川小学校PTAから生まれたソフボールチームのメンバーです。「もう10年以上前から、櫓の組み立てと撤去を手伝ってくれていて、彼らのサポートがなければ開催できないですよ。」と富田団地自治会長の澁谷さんも感謝をされていました。

富田団地のほぼ中央、スーパーや商店が並ぶ広場に植えられた1本の欅(ケヤキ)を囲むように、祭りの舞台となる櫓を組み立てます。 4本の柱、様々な長さの床板や柵などが欅の周りに並べられ、一目では櫓のどの場所に使う部材なのか判別できません。手慣れたメンバーさんたちは書かれた記号と自信の記憶を頼りに適材適所でどんどん組み立て、30分もすると櫓らしい姿になりました。そしてジクソーパズルのピースをはめ込むように、床板が収められていきます。

その中に、一部が切り取られている床板を発見!

「櫓の中心にある欅の幹の太さに合わせて、カットした板ですよ。初めはもっと細かったのですが少しずつ太くなり、太さに合わせてカットされました。50年近くになると、幹の太さも倍以上に育ちましたからね。」と、ベテランのメンバーさんに教えていただきました。

最後に、櫓に上がる階段を取り付けて完成です。「団地に暮らしていた設計士さんが設計しましたから 200人乗っても大丈夫です。この櫓を建てることで、『今年も夏が来たなぁ』と思われる住民も多いと思います。地域のみなさんのために、櫓の組み立ては続けようと思います。」とメンバーさん。

櫓が建つと、住民のみなさんの会話の中に、夏まつりの話題が増えます。子どもも大人も、待ちに待ったその日まで、櫓を見上げて笑顔になります。


櫓の上で記念撮影。このあと、ソフトボールチームのメンバーさんは、練習試合に行かれました。


この日、集会所では自治会のみなさんが、夏まつりに使用するゴミ箱100個を組み立てていました。

~多くの人の支えで、当日を迎える~
富田団地の夏まつりは、自治会と住民のみなさんが協力し合って行っています。それがもっとも表れているのが、マナーの良さです。会場やその周辺にはゴミも落ちていませんし、屋台の列もきちんと順序を守っていました。みなさんが受け継いできた夏まつりだからこそ、一人ひとりの気持ちの中に「私たちの夏まつり」という意識が、櫓の中心に立つ欅のように根づいています。

自治会のみなさんが、団地を含む周辺地域の活性化に力を注いでいることも、祭りの成功に結びついているのでしょう。周辺企業の寄付や団地内の商店の協力で屋台などを運営し、お楽しみ抽選の景品には、団地内の商店で利用できるお買物券を賞品として還元されています。利用者も商店もともに喜ばれる仕組みが、穏やかな夏まつりの風景をつくっています。

そして、元気な子どもたちの未来のために、夏まつりを続けることに、みなさんの気持ちが一丸となっています。


お買物券

~小学生56人の和太鼓で、夏まつりの幕が開ける~
午後5時、玉川小学校の子どもたちが演奏する和太鼓が鳴り響き、夏まつりムードが一気に高まりました。
4年生から6年生の和太鼓クラブ12人、有志で参加してくれている 3年生21人、 4年生23人。合わせて56人の演奏です。和太鼓クラブは、週一回のクラブの練習と朝の練習を積み重ねました。有志で参加した3・4年生は 4月から基礎練習を開始。構え方や音の出し方など一から練習したハレの舞台です。裸足に法被姿で勇ましく、“ソーレ”の掛け声もぴったりと息が合い、「まつりだいこ」「たいこばやし」などの 3曲を披露してくれました。

続いて、大阪府立大冠高校和太鼓クラブ『唯風(いふう)』による勇猛果敢な和太鼓の音が団地の住棟に響き渡ると、周辺の住民のみなさんも駆けつけ会場全体が賑わい始めました。力強い音で太鼓を打ち鳴らす『風雷神』、小刻みに大小の音でリズムをつくる『天天尽』、 4人の演者による三味線が奏でる『海の声』など10曲が演奏され、さらにはアンコールまで。自主的に厳しい練習を乗り越えてきたからこそできるダイナミックで堂々とした演奏は、約一時間におよびました。飛び散る汗をものともしない集中力に、演奏後はたくさんの拍手とともに観客からは「ありがとう」の掛け声がこだましました。

3年生で部長を務める杉浦祥樹さんは、「本格的に練習を始め、1年生の上達を披露できる初めての舞台。演奏後の達成感がすごく気持ちいい。」と語ってくれました。
次期部長で 2年生の福嶋芽衣さんは、「みんなで相談し、もっとうまくなるために練習を重ねてきました。 最高のパフォーマンスでみなさんに聴いていただき、拍手をいただくことでもっとがんばろうという気持ちになれます。来年も聴いていただけるように練習に励みます。」と嬉しい言葉を伝えてくれました。
顧問の寺尾先生は、「富田団地から通っている生徒もいますから、ここは地元です。高校生活の 3年間で大きく成長する姿が、そのまま太鼓の音になるのですよ。音の出し方の変化とともに成長ぶりを楽しみにしています。」と教えてくれました。

その後、自治会員の子ども達が演奏するこども太鼓の「あられちゃん音頭」が披露されました。12人の参加者はみんな団地の子どもたちです。中には、妹の手を取る姉の姿が微笑ましい姉妹の参加もあり、揃いのはっぴに鉢巻き姿で、一生懸命にリズムを取る様子に、会場が和やかな雰囲気に包まれました。子ども達が叩いた樽は、自治会長の澁谷さんが灘五郷の酒造メーカーからのいただきもの。「奈良県の吉野や大阪府和泉市の醸造メーカーからも連絡をもらい、樽を取りに行きましたよ。多い時には 120個ぐらいありましたが、少しずつ傷んでしまい、今では 40~50個になりましたが大切に使っています。」と、子どもの参加者も多かった昔を懐かしんでいました。

~半世紀近く続く、富田団地の歩み~
富田団地の夏まつりは、入居が始まった翌年、住民たちの声を受けて自発的に始まりました。一時期、人が多すぎた時は、小学校のグラウンドを借りたこともあるそうですが、その数年間をのぞけば、現在の場所で開催してきました。

当時20歳代で入居した人は70歳近くになり、今では子どもたちが夏まつりを懐かしみ、孫を連れて帰って来ると聞きました。屋台の行列に並ぶ女性は、「仕事のあるお父さんを残して子どもと帰省しています。結婚前もそうでしたが、毎年の夏の恒例行事になっていて娘も楽しみにしていますよ。」と笑顔で語ってくれました。

また、閉店後の商店の前で楽しんでいるファミリー連れのお母さんは、「 10年ほど前に引っ越してきて、一番下の息子はここで生まれました。この子が大人になった時に思い出に残る夏まつりですので、これからも続けてほしいと思います。」と話してくれました。
小学生の娘さんと一緒に焼きそばを食べていた男性は、「団地に住んではいませんが子どもの頃にも友達と来ていました。夏休みは、周辺の祭りや盆踊りをハシゴしていました。ここに来ると昔が懐かしいですね。」と。屋台の周りで元気いっぱいな中学生や高校生たちを見て、ほろ酔い気分を満喫されていました。

70歳代になる親から子へ、そして団地で育ったその子どもたちが孫を連れて帰ってくる。半世紀近くにわたり受け継がれる富田団地の夏の風物詩は、地域のみなさんがずっと支えています。

所在地:高槻市牧田町6番 他

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