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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

artproject_stage8

ディスカッション3 

ステージ7で紹介した第3回フィールドワークを受けて、ディスカッションも3回目となりました。学生たち(芸術計画学科生11名)の意見もツボを押さえ始め、訪れた4つの団地の特長とともに、具体的なアイデアを語ってくれました。

~住民が参加できるイベントをしたい!~
香里ヶ丘みずき街に設置された『思い出の庭』には、いろいろなキャラクターを模した手づくりの陶板が並んでいます。
学生からは、「陶板をつくった人々を集めて、当時の様子や今になり感じることを話し合う、まるで同窓会のようなことができると、これから先も大切に伝えられていくのではないだろうか」という意見がありました。
また、「陶板のタイルを判子に見立てることで何かできそう」というぼんやりとしたアイデアに、谷悟先生からは、「凹凸があるから、拓本の要領で図柄を浮き出すことができ、設置されている作品を2次元に置き換え、それらをデータ化して活用できますね」という助言が飛び、さらに「その作品の図を入れたメッセージカードを制作者に送ってあげたりすると、年月が過ぎた中での思い出がよみがえるのではないでしょうか」と、付け加えられました。


香里ヶ丘みずき街の『思い出の庭』の陶板。


杉本利延氏の作品、『河童』を団地の名物にしてもいいという学生の声も。

団地の横を流れる小川に設置された『河童』については、仲間を増やせば、名物になっていいのではないかという学生の声が多く、団地に設置されているパブリックアートにテーマを設けて、スタンプラリーのようなイベントをしてみるのも、おもしろいという意見がありました。

さらに、「上流にある飛び石を展示台に見立てて、団地の皆さんと一緒に作品をつくり、水の上に浮かぶアート展示ができると夏のイベントらしく季節感もあっていいなあと思いました」と、学生たちのアイデアも、実施することを意識した具体的なアイデアに変化してきました。


香里ヶ丘みずき街の近くを流れる水路に造られた飛び石。

 

~学生の興味をそそる『天狗の足跡』~
若山台中央団地・若山台第4団地で、学生たちがひときわ注目したのが『天狗の足跡』です。 「団地の子どもたちに、この足跡を見てどんな生き物なのかを想像してもらい、絵を描いてもらってもいいのではないか」という意見や、「団地の中に足跡がいっぱいあるのもおもしろいし、どこにあるのかを探して回るイベントもできるのではないか」と、学生たちの遊び心をくすぐったようです。
谷悟先生は、「足跡という部分から空想することがアートでは大切であって、作家さんにも来てもらい、語り合いながら、イメージを膨らませることが、アートプランニングの醍醐味につながる」と語られました。いろいろな人がこの地にある足跡を手掛かりに多様な天狗の像を生み出すことがアートの広がりを実感できるワークショップになり得ると注目されたのでしょう。

加えて谷先生からは、天狗を題材にした作品の背景に潜む説話や伝承がこの地にあるのかもしれないという洞察力を持ち、この場所の歴史を調べ、若山台界隈の成り立ちを学び、地域資源を核としたアプローチが求められることを伝授。そして、それらの基本を踏まえた上で、斬新なアイデアを積み重ね、時代に響く表現が新しいアートになることも語られていました。


~アートが誇りを生み出す~
富田団地では、アート作品の『こどもギャラリー』について、「自分のふるさとはここだ!とマーキングしているように感じる」という感想があがりました。
さらに、「当時作品を制作した皆さんに改めて作品をつくってもらい、『おとなギャラリー』をつくりたい」とか、「この団地に今、住む子どもたちの手による『こどもギャラリー2015』も見たい」など、団地の歴史を振り返り、時の記憶を活かしたアイデアが多数ありました。


団地の暮らしの息遣いを今に伝える富田団地の『こどもギャラリー』。

自治会の澁谷哲男会長からお伺いした積極的な活動に関心を持ち、自治会主催の季節のイベントに協働したいという学生たちの意欲もみられました。
例えば、毎年行われているこいのぼりのイベントに参加し、住民のみなさんと一緒になってこいのぼりを制作し、それを天高く泳がせたいと。具体的には、「着なくなってしまった古着を集め、十分にカラーリングを設計した上で、大人のみなさんに裁縫していただき、こいのぼりをつくり、子どもたちに足跡でうろこを描いてもらうと住民の皆さんに一体感が生まれ、毎年初夏に思い出される“富田のこいのぼり”の記憶が、団地の名物になるのではないでしょうか」と、来年に向けた具体的なアイデアも紹介されました。


富田団地の集会所で、自治会の方を交えての記念撮影。


これには、谷悟先生も「すばらしい!」と一言。想いがその地に宿るのがいいと褒めていました。「団地だけでなく周辺の住民にも声をかけて行うと格段に価値が高まるので、団地の皆さんの誇りになると思います」という言葉に学生たちの士気も高まり、アートプロジェクトを実現へと導く第一歩が踏み出されたように感じます。

撮影:松本 尚大 etc(長谷川写真事務所)

 

 

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