山川咲(CRAZY WEDDING)
#3 団地で結婚式の可能性
今回、実際に団地を下見されての感想を教えてください。
山川:私は、新しいホテルやマンションをどんどん建てるとか、消費社会に対して違和感を感じています。消費を煽る世の中ってどこへ向かってるのかなというのが、会社を創業した根本にある違和感なんですね。この世の中の流れに対して、自分たちで違う流れをつくることが私たちの存在意義だとすれば、団地にはそこにしかないもの、その年月をかけないとできないものがあることが、やっぱり面白く感じられました。
建てられて一定の年月を経てきたからこその魅力、ですね。
拝見したのが古い団地だったので、“これって洗濯機をどこに置くの?”とかありましたけど、工夫して住まうってすばらしいなと思うんです。すべてが完璧に揃っていることって、人間を低下させていくような感じがするから。寒いからこのすき間をどうにかしようだとか、母親もそういう風にして暮らしていたことを思いだしました。

小さい頃はワゴンカーで旅をしながらの生活、その後、大自然の一軒家に暮らしていたそうですね。
大変な暮らしでしたけど、七輪で何か焼いて食べたら楽しいんじゃないかとか、そういった母親がやってきたことを最近、身近に感じるんです。
当時は納得してなかった?
ほんと、私だけなんでこんな暮らしをしなきゃいけないんだろうって泣きながら、薪でお風呂を焚いてました。紙一重だったと思いますよ、グレるか、こういう風に育つか(笑)。だけど、今となっては財産です。何かが足りなかったとしても、ちょっとダサかったとしても、いろんな条件や制約がある中で考えてやっていくのが面白い。なんでもいいよって言われたら、なにもつくれない。いろんな制約があるからクリエイティブになれると思っています。
団地でウェディングの可能性はありそうでしょうか。
全然あります。御殿場アウトレットだとか、『TOKYO DESIGN WEEK』というクリエイティブの祭典だとか、公衆の場での結婚式はやってきましたので。結婚式には知らない人をつないだり、コミュニケーションを円滑にする力もあるんです。そういう意味では団地でだってできますし、団地にはいろんな世代の方がいらっしゃることにも可能性を感じました。何かをつくらなきゃいけないとなったら、おばちゃんたちが助けてくれそうだなとか、子どもたちにお揃いの洋服を着せたらかわいいだろうなとか、いろいろ想像はふくらみます。もちろん、緑が多い環境もいいですね。

団地の集会所で下見中
団地ウェディング、楽しみです。
団地で結婚式をする意味というのはまだまだ模索したいなと思います。単にその団地に住んでたからとかじゃない、面白さを見つけたい。
最初に例に挙げていただいた牧場で馬に乗ってという結婚式も、馬が好きな新郎新婦だから実現したわけではないんですよね。ほのぼのウェディングというコンセプトから導かれたもの。
そうです。サッカー好きだから、サッカーウェディングという単純なことであれば、世の中の人にまかせておけばいい。私たちがやるからには、“そうか! それで団地が会場なんだ”と驚かれるようなところまで考えたいですね。

文:竹内厚 写真:佐伯慎亮
(2016年1月28日掲載)
クレイジーウェディング
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