2016.05.05
with
SHINGO☆西成(ラッパー)
around
西成~天王寺~寺田町〈大阪市〉
ぶらぶらと散歩しながら街を観察してみる、略して“さんかつ”。
今回このコーナーに登場してくれるのは、ラッパーのSHINGO☆西成さんです。
SHINGOさんといえば、その名の通りレペゼン西成のラッパー。
生まれ育った西成の街をテーマにした歌もたくさんありますが、音楽活動だけではなく、炊き出しのボランティアを始め、この街のプロジェクトをぐいぐい引っ張る元気玉。お肌もツヤツヤです。
そんなSHINGOさんと、この街の名物「負けない」看板に集合、お散歩に出発です! チャス!
SHINGO☆西成
大阪市西成区出身のラッパー。炊き出しから西成ウォールアート回廊、米カンパライブなどの地元の活動にも積極的に参加。合言葉は「ゲロー」「ラパッ」「チャス」などなど多数。2016年内には新作を発表する予定。
#01
ボランティア/オーナー名言集/ビワ/猫塚
ーこんにちは。
SHINGO:まいどまいど。SHINGOです。
ーその服、いいですね。2014年の大阪マラソンの? 背中に「ボランティア」って書いてますね。
西成で買ってん。今度、ライブやるときに着ようと思って。300円。
ーいい買い物。
いきなりやけど、この店の張り紙、好きやわー。オーナー名言集、って。
ー麻雀屋さんなんですね。その横に白竜、ってのが決まってます。
こっちの壁もすごいな、「杉本おば電話してくれ」って。
ー駅の伝言板みたいになってますね。
いろんなメッセージがいっぱいあるわ。「祝 きれいな」っていうのも(笑)。
ーほめてますね。
伝えたかったんやろな。
ー阪堺線のガードをくぐって東へ抜けましょうか。
やっぱりこのチンチン電車の“しょんべんガード”を越えると雰囲気が変わるね。同じ町内やけど空気が変わる。
ー地元のひとでもそう感じるんですね。
うん。子供のころから感じてたし、今もあるね。空気感とか肌感覚もあるけど、行ってええエリア、あかんエリアって大人が言ってたこともあって。
ーなるほど。さらに東へ、路地を入っていくと住宅エリア。グラフィティもほとんどなくなります。
(グラフィティ)ライターのルールもあると思うしね。このあたりの路地のいいところは、長屋の前に植木がめっちゃあるところ。で、かならずビワが育ってる。
ー路地の植木あるある?
食った後の種を植えて…ってやりがち。
ーたしかにビワの種は植えたくなるサイズです。
あそこが猫塚。上方演芸発祥の地がこの辺で。そのひとたちの三味線に使われた猫の供養やね。
ー「てんのじ村」と呼ばれていた町ですね。猫塚の隣には近松門左衛門の碑もあります。
面白いのは、ここを掃除したりする住民が当番制で変わっていくねんけど、ひとによっては狐の像にマジックでまつげ描いたりして。削れてきたから、って。
ーうわ、ほんとですね。
それが問題にもならず、「もー、あのひとなに描いてんねん~(笑)」とか言いながら。よかれと思ってやってるから。
ー猫の額ほどの境内ですけど、すごくきれいにされていますし、大事に守り続けられている場所なのがよくわかりますね。
YO!/ロボとカトレア/土地の癖
ー商店街の方へ行きましょうか。
SHINGO:ここらへんの商店街は最近、10年以上閉まってたところに、韓国や中国のひとがやってるカラオケ居酒屋が増えてきてる。
ーほんとですね。あそこの張り紙に、猿の顔はなぜ赤い、とか書いてますね。SHINGOさん、どう思います?
しりまっか。
ーありがとうございます。
ねづっちです。
ーあそこに「酔う」というお店が。
YO!
ーありがとうございます。
動詞を店の名前にするって、あらためて遊び心満載の街やな。(知り合いを見つけて)あ、こんちは!(しばし話す)。
ーこのまま新開筋中央商店街へ入りましょう。
この南側が飛田新地やね。
ーそういえば、SHINGOさんには飛田新地の一軒一軒の名前を歌う曲(「飛田新地」)がありますね。…「ロボ」「カトレア」と、いい感じの喫茶店が続きます。
いい情報、言おか?
ーはい。
(小声で)「ロボ」が定休日のとき、「カトレア」は売り上げが2割上がるらしいで。
ーSHINGOさんの地元密着ぶりがよく分かる情報です。
それが何十年も続いてるらしいで。あ、ここ、もう閉まったけどこのアダルトショップの横が同級生の家やって。昔は大人のおもちゃまるだしですごかってんから。連れの家の隣にすごいチンチンがあって。
ー(笑)SHINGOさん、商店街かなり好きですよね。
オレ、ライブで日本全国いろんな街に行くけど、商店街とその街にしかないコンビニみたいな店ってあるやん?そこには絶対行きたいと思ってて。
ーなぜですか?
その土地の癖が出てるからかな。
ーその土地に根付いてきた生活が見える気がしますね。
ここは昔、立ち飲み屋で。オレが小学生の頃は、夜勤明けのおっちゃんが道にあふれるくらいいた。今でいう、バルやね。(突然走り出すSHINGOさん。その先には大量の空き缶を自転車から落としてしまったおじさんが)
ー背中に書かれたボランティアは伊達じゃないですね。
おー!(偶然、小学校の同級生に会いしばし談笑)
ーもしかして初恋のひと?
そんなわけないやん。(また知り合いを見つけて)あ、こんちは!(しばし話す)。
取材・文:中村悠介 写真:原祥子 編集:竹内厚
→ SHINGO☆西成さんとの「さんかつ#2」
次回は、再開発めまぐるしい天王寺駅周辺へ。
SHINGOさん、またも突然走り出します。もうSHINGO☆ボランティア、でもいいかもしれない。