あちこちを移動しながら販売する「ノックの帽子屋」。そのスタイルについて、さらに話を伺っています。
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素朴な質問ですけど、どの土地へ行ってもお客さんはいますか。
ノック:まあ、いたりいなかったり。いなかったら観光に切り替えます。うじうじしてもしょうがないので。いずれにしても、昼はまるまるその場所にずっといて。夜は飲みに行きます。
利益を飲んじゃいそうです。
ノック:今のところは大丈夫。今年はわからない…来年もわかりませんけど、今のところは。ある程度のこせて、旅行費、じゃなかった渡航費も出せてますから。
販売させてもらう場所はどうやって探しますか。
ノック:たとえば九州だったら、最初は福岡、長崎、佐世保でやってたんですけど、熊本でもやりたいって人から連絡をもらって。あと、毎回来てくれる鹿児島の方がいて、じゃあ、鹿児島も行きますよって場所を紹介してもらって。ほんと、バンドマンみたいですね(笑)。
たしかに、全国ツアーを続けているミュージシャンを思えば、想像しやすいですね。
ノック:そんなイメージです。
旅先での寝泊まりはどうします?
ノック:出店先の家に泊めてもらうこともあるし、ゲストハウスに泊まったりも。寝るだけなんでどこでも。ちょっと人に疲れたらシティホテルとか。親切にしてもらうのも疲れてくることがあるじゃないですか。
洗濯したてのシーツに布団を出していただく親切、うれしいけど…ってところですね。
ノック:風呂にも入らず、もうそのまま畳で横になるだけでいいって日もありますから。
とかやってると大変だけど、楽しいでしょうね。
ノック:飽きません。別に場所はどこでもいいんです,言ってもらえたら。
高知の宿毛ってところでやったこともあるんですけど、高知市の人に「なんで宿毛で?」て言われました。高知市内からも飛行場からも約2時間かかるんですよ。
そんな場所でわざわざやる理由がわからないと。
ノック:だけど、呼んでくれた方ががんばってくれて、ちゃんと成立しました。自分だけで勝手に行っても全然ダメだと思うんですけど。
福岡の店には羊の骨格標本がディスプレイされていた。聞けば、「一度つくってみたくて」ジンギスカン用の羊をまるごと購入して、3日煮こんで肉をとって、漂白、殺菌をして組み立てたものだそう。「しばらく展示台として使ってたけど、もう引退させました」とのこと。 骨格標本をつくってみたい、そんな欲望もあるんだ。
帽子屋としてはもう何年ですか。
ノック:12年目かな。でも、まだとりあえずという感じです。今のところ、これでご飯が食べられてるから。
それにしては結構な年月やってきましたね。
ノック:そうですね。
いつか違うことを始めるかも?
ノック:かもしれません。けど、帽子はとりあえずつくれるから、もし居酒屋をやるにしてもその片隅で帽子は売ってるかな。
いいですね、それ。「ノックの居酒屋」とか、「ノックの◯◯」という屋号のままで次の店が開けるという。で、ノックさんのできることがひとつずつ増えていくんですね。
ノック:まだなんともわからないですけどね。とりあえず福岡はご飯がおいしくて住みやすいです。家賃は、前の東京が3畳間だったので、少し上がりました。けど、古民家的なのはもうしばらくいいかなと思ってるので。
福岡の店は当然、不定休。ノックさん不在のことも多い。移動販売の先は、ノックさんのフェイスブックで告知されている。
文:竹内厚 写真:平山賢
(2017年10月26日掲載)