曜日代わりのショップ!
長屋のシェアキッチンで店を開いてみる。
パン屋さん。ケーキ屋さん。お菓子屋さん。
子どもの頃、憧れた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「お店、やってみたいなあ」といまも思いつづけている方、朗報です。
週に1回でも、自分のお店を開くことができるという、
新しくできた「キタの北ナガヤ」にある、会員制シェアキッチン「キタナガキッチン」を取材しました。
1階にショップやオープンスペース、2階は民泊。
大阪メトロ「中津駅」の2番出口から徒歩3分ほど。住宅と飲食店、事務所などが混在する細い路地を抜けていくと、見えてくる長屋が「キタの北ナガヤ」です。
2018年6月にオープンしたての「キタの北ナガヤ」
オープニングイベントの様子。近隣のお店の方も出店したりと、盛り上がっていた。
「キタの北ナガヤ」1階の路面にはギャラリーやショップ、デザイン事務所など、8つのショップとテナントが並んでいます。さらに、“BIO(Batonship Inn Osaka)”という宿も4戸あり、それぞれ独立した玄関があるという長屋の機能がそのまま活かされています。元々日本らしい“お隣さん”コミュニケーションを育んできた長屋の文化を残しながら、海外旅行客も呼びこんで、街と暮らしと旅行客が重なりあう関係性が生まれつつあります。
2018年7月に運営をスタートした民泊宿。1戸まるまる借りることができる。
「この施設は、古いものを徹底的に再利用するという手法にこだわっているため、意匠的にも、使える材はそのまま使っています。テナント運営に関しても、匂いや虫などご近所さんに影響が出やすい重飲食は避け、イベントスペースは公民館のように解放し、近隣の方々を巻き込んでまちと共存していけるような仕組みをつくっています」とキタの北ナガヤ管理人/Batonship代表の小野達哉さん。
「お店を開きたい!」という、多様な想いを叶えてくれるシェアキッチン
「キタの北ナガヤ」のテナントの一つに、今回の目的である、会員制シェアキッチン「キタナガキッチン」はあります。取材した時には、7名の店主が週替りで利用するスペースで、あんこ屋、お弁当屋、ショコラティエや総菜屋など、様々なショップが参加。不定期に参加している店主もいるそうです。
8平米弱の小さな空間でテイクアウトの商品をつくっています。奥にキッチンと冷蔵庫、共同で使える調理器具が揃う。
現在、ここで定期的に開いているお店の一覧。オープン日や営業時間も各ショップごとに異なる。オープンスケジュールは、「キタの北ナガヤ」のホームページや、「キタナガキッチン」のSNSの他、各店主のSNSからもチェックできるようになっている。
キッチン奥に貼られた、共用ルール。決まっているのは使用する曜日とキッチン利用規約など。
毎日通っても、毎日違うお店がオープンしているので、 通勤や買い物の行き帰りに「今日は何が買えるかな」とちょっとのぞいてみたくなります。
運営リーダーの木村久美子さん。シフォンケーキを20年以上食べつづけ、焼きつづけているというプロフェッショナル。
毎週木曜日に『シフォンケーキあれこれ』をオープンしている運営リーダーの木村久美子さんは、建築設計という本業の傍ら、マルシェなどでの出店活動を重ねていました。
「キタナガキッチンの話を聞いた時に、家賃も低価格で借りられるし、週に1日なら続けられるかもと思いオープンしました。マルシェに出したりしてきたことの本番バージョンといった感じでしょうか。場所の共有についても、オーナー同士も付かず離れずの距離感を保っていて、マナーを守り合いながら維持できています。将来的にお店を運営したい人、副業でされている人など目的は様々。自分のお客さんに他のお店を紹介し合ったりという、良いコミュニケーションや循環が生まれています」と木村さん。
たまごシフォンケーキやフルーツサンドなど、オリジナル商品を4種類40個ほど販売している。
取材日は、夏休み中の娘さんが一緒に接客のお手伝い中。
道行く人が気軽に立ち寄れる。「キタナガキッチン」を利用するショップどうしのコラボレーションから生まれた、あんこ入りサンドイッチやチョコレートシフォンなどの商品も楽しめる。
百聞は一見にしかず。
初期費用や設備投資だと悩む必要なし。実際に店頭に立って、商品を販売してみるという実践がしやすい条件が整っています。今なら、夜営業の店主を募集されているようですよ。
私もカフェがやりたい時期に、こういう場所と出合いたかったな。
あなたなら、どんなお店をやってみたいですか?
取材・文:小倉千明