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ニュージーランド、特にぼくの住むオークランドの住宅は高騰している。20代で家を買うことは考えられないほどであり、多くの若者たちは、アパートやフラットを借りて暮らしている。
そんな高騰する住宅事情の中で、少し面白い動きがある。多くのぼくたち世代の若者は、家を買うことを諦め、洋服など身のまわりや家の中のプロダクト、それから車にもこだわって生活し始めている。
今回は、ぼくが彼女とふたりで暮らす家を撮影した。
家賃は、週に350ドル、約3万円。日本でいうところの、オール電化でガスは通っていない。
 

ぼくの家は少し奇妙な形をしている。大きな家を3つに区切ったような構造の小さなアパートで、目の間には部屋より大きな庭がある。庭には、鳥が来て、隣りの猫が来て、ヤシの木が見えて、なかなかバリエーションのある風景である。
ニュージーランドの上空にはオゾン層がないといわれているが、こちらの光はそんなことを忘れさせてくれるほどに美しく差し込む。それらを大切にする人柄からか、光の差し込むことを考えた家の構造、窓の構造をしている。
また、Ponsonbyというカフェやショップのたくさんあるエリアから近く、道を下れば、ビーチにも歩いて5分ほど。潮の高いタイミングを見計らって、ダイブしに行くこともある。さくっと泳いで、家でシャワーを浴びる。そんな海とのつきあい方をしている。
 

最初に書いたように、面白いことにキッチン用品を中心に、日本のデザインを扱うお店も増えている。もちろん、それらのお店が盛り上がっていることは、家賃の高騰に比例するようで、若者のカリグラシを象徴しているようである。
心地よい光の射す室内で過ごすこと、それに加えてビーチや庭で過ごす時間が多く、家賃の高騰するなか、独自の生活スタイルを見つけ出している。
カリグラシを楽しみ、それらに花を添える生活スタイルを自分たちで見い出すということ。ぼくはとても素敵だと感じている。


岩崎 淳
写真家。京都出身。淡々としたドラマのない、ものとものの間を撮影するような、瞬間と瞬間を埋めるような写真を好む。
https://juniwasaki.org

カリグラシコラム

そのことを仕事にしている人もいれば、普段の暮らしの中でモヤモヤとした思いが浮かんでいる人もいる。借り暮らしにまつわる意見や考えを、さまざまな人たちが自由なスタイルで綴ります。

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