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父、おとうさん、パパ、親父……
その後ろ姿から
家族と住まいのことを見つめます。
ベベチオのはやせさんによる父さん話。

父さんは宮崎の延岡で育ちました。子供の頃は貧しすぎてろくに食べれなかったけど、もちろん本当は、海の幸、山の幸どちらも手に入る場所。そんな父さんの持論が、「食べもんは採れたてか腐りかけが一番うまい」でした。カニなんかでもお酒をぶっかけて熟成させて食べたりして。ある日、父さんといっしょに延岡の海へカニを採りに行ったら、父さんはカニにざくっと親指を挟まれて、血がだらだらと出て。そのせいで父さん、ちょっとイラついたのか、その場でカニの足を折って、バリバリと食べてました。それ以来、うちではカニはフレッシュに食べることが多くなりました。
だけど、肉に関しては腐りかけがうまいって、父さんは死ぬまで言い続けてました。それも安い肉を腐りかけにするのがうまいんやって。言ってみれば、今、流行の熟成肉みたいなことかもしれないけど、父さんは随分、時代の先をいってた。僕からすれば、別になんの工夫もせず、ただ冷蔵庫で腐りかけまでにして肉を食べるのは嫌だった。父さんは、いつも匂いをチェックしてから、ちょっと焼いて、うまいなって食べてました。豆腐や牛乳もそうやってちょっと腐りかけまで待ってるときもありました。そのせいなのかはわかりませんけど、父さんはほとんど風邪は引かなかった。お腹をこわしてる姿もほとんど見たことがない。白ごはんはほとんど食べない、夜は酒ばっかりという偏った食生活でしたけど、腐りかけは父さんの数少ない食のこだわりでした。


早瀬直久
音楽ユニット「ベベチオ」のボーカル&ギター。暮らしをもっと盛り上げる企画チーム「ragumo」の代表も。
春めいて来ましたね。キャンプに山登り、ヤッホーです。3/9(土)に梅田ムジカジャポニカでベベチオバンドでワンマンライブ、3/29~31の3日間は『ベベチオ、西へ』で広島・岡山ツアーです。
http://www.bebechio.com

イラスト:ちえちひろ 構成:たけうちあつし

  

カリグラシコラム

そのことを仕事にしている人もいれば、普段の暮らしの中でモヤモヤとした思いが浮かんでいる人もいる。借り暮らしにまつわる意見や考えを、さまざまな人たちが自由なスタイルで綴ります。

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