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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

artproject_stage13

富田団地 鯉のぼりワークショップ
『ケを紡ぐハレの会』 

大阪芸術大学とURが協働事業で進めてきたアートプロジェクトの企画第1弾が、これまでの活動をふまえ、ようやくカタチになりました。約2年間におよぶ活動の区切りとして、富田団地で、住民のみなさんと大学生とURによる鯉のぼりワークショップ『ケを紡ぐハレの会』が、3月13日・21日に実施され、3月27日に玉川小学校の正門前に掲げられました。

 


〜1時間足らずで、80枚のうろこが完成〜
大阪芸術大学芸術計画学科の学生たちと谷悟先生、大阪芸術大学工芸学科テキスタイル・染色コースの中谷友机子先生の協力を得ながら、いよいよ鯉のぼりづくりが始まりました。

全長7メートルほどの大きな鯉のぼりの形をした白い布が、長机に広げられました。「さあ、どうしようかしら?」と中谷先生が思案します。 その横では、住民のみなさんから集めた思い出の古布を谷先生と学生が選別しています。できるだけ軽く、明るい色合いで、縫いやすい生地を選びました。 学生が、準備してきたうろこの型紙を鯉のぼりの形をした生地の上に並べ始めました。自然なうろこに見えるように、授業の合間に研究を繰り返してきた成果の見せ処です。


大きな布をうろこの形に切っていきます。

「さあ、はよ、やろか」と、集まってくれた団地の女性たちの気合も十分です。
「1枚ずつだと生地が薄いから、切り目がギザギザになってダメだね」「同じような色ばかりじゃないほうがいいわね」
見る見るうちに、うろこが80枚ほど完成しました。

 

〜うろこの模様に試行錯誤!〜
大きな鯉のぼりの布に、カットされたうろこが並べられました。柄の布が多かったので、ちょっと派手なデザインに。
谷先生が、「柄と柄の間に、無地や小柄の生地でできたうろこを挟みましょう。そのほうが鯉のぼりのデザインが引き立ちますよね?」と、問いかけると、お母さんたちは、「そうそう」と言いなが少し手を休め、遠目にうろこのデザインを眺めていました。すかさず、谷先生。
「ここは、赤い色が映えるよね?」 「じゃあ、私が切るわ、一枚でいいの?」 「ここは重なって見えちゃうから、入れ替えましょう」とお母さんたち。にぎやかな会話を聞いていた谷先生は、「住民のみなさんが楽しそうにやってくれるのがいいですね。自分たちで作る。富田団地には、自治精神が根づいていて、何事も自分たちでやるという生きる力を感じますね。」と、顔をほころばせています。

テーブルの端には、モニターが設置されました。ワークショップの様子を1階のアートカフェに中継し、学生たちがモニターを見ながら行き交う住民に説明していました。
芸術計画学科でアートプロジェクトの企画を学ぶ学生たちは、表現することだけでなく、アートをつくるプロセスも大切に考え情報として発信することも常々学んでいます。谷先生いわく、「手で作業すること、それを、メディアを使って発信すること。ローテクとハイテクの融合が、これからのアートには求められています。人のエネルギーを最大限に活かせる仕組みづくりが、プロジェクト成功のカギを握ります。」


ワークショップの様子はモニターを使って中継しました。

 


~眼をデザインして、魂を吹き込む~
3月21日には、いよいよ、眼の部分が縫われました。眼は、2つの布の大きさを変えて縫い合わせ、力強くデザインしました。しっぽも、鯉のぼりの躍動感が出るようにデザインしました。小さな鯉のぼりに手や刷毛で色を付けていた子どもたちからも、「わー、すごい、きれい!」と声があがり、出来栄えも上々です。ワークショップに参加してくれた住民のみなさんからも、学生からも、自然に拍手が起こりました。


団地のみなさんのパワーでカラフルなうろこが完成しました。

学生たちと団地のみなさんが力を合わせて作った思い出の鯉のぼりが、いよいよ空を泳ぎます。

 

〜新入学生を迎える、思い出の鯉のぼり〜
3月27日、鯉のぼりを玉川小学校の正門前に掲げました。団地のみなさんから集めた思い出の古布を、眼やうろこに見立てて張り合わせた大きな鯉のぼりと、ワークショップで子どもたちが手や刷毛を使って描いた小さな鯉のぼり(ステージ12参照) 合わせて12匹が、桜の咲き誇る空に泳ぎました。

富田団地の自治会長を務める澁谷さんは、「団地のみなさんと、学生さんたちが協力して作った鯉のぼりは、迫力があってすごく目立ちますね。力強く泳ぐ姿からは、一緒に作ったみなさんの心を感じます。団地で暮らす新一年生たちも、この鯉のぼりのように明るく元気いっぱいで、富田団地で楽しい思い出を作ってほしいと願います」と、満面の笑みで答えてくれました。


みんなで作った鯉のぼりをいよいよ空に掲げます。

 鯉のぼりワークショップ『ケを紡ぐハレの会』のリーダーを務めた大阪芸術大学芸術計画学科新4回生の田中健太郎さんは、「鯉のぼりが上がった瞬間、本当にホッとしました。最初はどうなるかと不安でしたが、住民のみなさんのパワーに助けられました。僕たちだけでやるのではなく、住民のみなさんと一緒に鯉のぼりを作れたことは、パブリックアートの一つの表現だと思います。富田団地の鯉のぼりが、みなさんに親しまれ話題になることで、住民のみなさんに元気を伝えられたらすごくうれしいです」とアートの可能性を実感していました。

住民のみなさんと冗談を交わし合いながら、親しげに話していた谷悟先生は、「僕が住民のみなさんに、“いじられる”ぐらいの距離感になれたから、大成功ですね。住民のみなさんに受け入れられ一緒に活動できるようになることが、アートプランニングに最も大切だと学生たちに伝えてきました。それが実証できました。住民、学生、URのまさに三位一体の賜物だと思います。この絆をさらに深め、継続する。そのために、喜びを分かち合う素晴らしさを、アートを通してもっと伝えていきたいですね。富田団地のみなさん、これからもよろしくお願いします!」と住民のみなさんに手を振っていました。


団地の新入生たちと鯉のぼり。


鯉のぼりと一緒に記念撮影。


4月の青空に映える鯉のぼりと桜。

撮影:長谷川朋也

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